パリ 13区の映画専門家レビュー一覧

パリ 13区

ジャック・オディアールが、現代パリを象徴する13区に暮らす人々の恋愛模様を、モノクロの映像美の中に綴る。コールセンターで働く台湾系フランス人、アフリカ系の高校教師、法律を学ぶ大学生、ポルノ女優。3人の女性と1人の男性の物語が連鎖していく。出演は、映画初出演となった本作でセザール賞有望若手女優賞候補となったルーシー・チャン、本作でセザール賞有望若手男優賞候補となったマキタ・サンバ、「燃ゆる女の肖像」のノエミ・メルラン、ロンドン出身の女性4人組ポスト・パンク・バンド“Savages(サヴェージズ)”のボーカルとして活躍したジェニー・ベス。原作は、グラフィック・ノベル作家のエイドリアン・トミネ。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    いきなり裸の女の人が出てきて、嬉しくなった。主人公の女の子のキャラがいい。すぐセックスしちゃうけど、ナイーブでドライで、そこらにいそうな感じ。もう一人の堅そうな女の人も、どこか病んでいて、過剰に反応しちゃうとことか可愛い。嬉しすぎてガクンって気絶しちゃうとこ、好き。女の人二人に振り回される男の人もいい。いい人なんだけど、言っちゃいけないこと言って怒られたり。三人の関係が面白い。出会って、すれ違って、別れて。巧みな語り口に唸る。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    共同脚本が「燃ゆる女の肖像」(19)のセリーヌ・シアマということで大期待していたのだが、これは……。うまく生きられない男女の小さな物語が私には息苦しい。3つの短篇をくっつけてひとつにしているから、全体の規模がこぢんまりとさらに閉ざした世界観になってしまうのだろうか。こんなにラブシーンいる?というのも疑問。それがつながりの空虚さを表すために必要だとしても、他の撮り方はないのだろうか。最後の「ジュテーム」は私には残念ながら響かなかった。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    複数の短篇のプロットを織り交ぜて一本の長篇に纏め上げる手腕といい、気の利いた過不足ない台詞の妙といい、本作はまずもって脚本と台詞の映画である。だから、街の名前がタイトルでも街の様子が見えず、その喧噪が聞こえなくても、性が主題のわりには身体性が希薄だとしても、むしろ当然の帰結なのだろう。台詞も会話劇に至らないよう抑制されたもので、言葉の力に賭けてはいない。色や匂いや肌触りが欠如した、あたかも除菌されたかのような世界を表す、モノクロの画面。

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