エリザベス 女王陛下の微笑みの映画専門家レビュー一覧

エリザベス 女王陛下の微笑み

今年、生誕96年そして在位70周年を迎える英国君主エリザベス2世の人生と旅路を、女王への深い愛と畏敬の念をもって、ポップにカラフルに描いた初の長編ドキュメンタリー映画。2021年9月に急逝した「ノッティングヒルの恋人」などで知られるロジャー・ミッシェル監督の遺作。新型コロナウィルスによって次回作の撮影機会が奪われたときに監督自身が企画し、誰も見たことのない“素顔の女王陛下”の魅力に迫った。ザ・ビートルズ、エルトン・ジョン、ダニエル・クレイグ、マリリン・モンローらスーパースター、 歴史に残る政治家たち、錚々たるセレブが華をそえる貴重な映像や楽曲が満載。女王がたどった激動の70年に思いを馳せ、ロジャー・ミッシェル監督ならではの<女王にまつわる映画>の綺羅星のような引用も楽しめる。「有名であることで有名」という一人の女性の生涯が、そのまま1世紀分の世界をめぐる壮大な映像詩となった。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    エリザベス女王の子どもの頃から今までの映像がちゃんあるってこと。それが決定的に良かった。それぞれの姿に時代が写っている。時間が写っている。見ていると彼女のお茶目なところがよく分かる。競馬に熱中して、飛び上がっちゃうとことか可愛くて仕方ない。沈鬱な表情は見せない。いつも明るく手を振って、握手して、毅然としている。シンドイところを隠して、明るく見せている彼女に心を動かされる。馬に乗っている時の楽しそうな顔。子どもの頃からずっとそれだけは変わらない。

  • 文筆家/女優

    唾蓮みどり

    テーマごとに分けられたエリザベス女王の映像。そこに多くの音楽重ねられ、その映像を彩ってゆく。アーカイブドキュメタリーとして、ここまでよく映像を集めたなぁという純粋な驚きと、細やかな編集の仕方にも底意地のようなものが垣間見えてくる。ただ、そこから新たな物語が浮き上がってくることはなく、実在する“フィクション”としての女王像が大きく変わることはない。そういう意味での驚きは感じられなかった。ところで、「ノッティングヒルの恋人」は大好きでした。合掌。

  • 映画批評家、東京都立大助教

    須藤健太郎

    英国王室のプロパガンダに連なるこの映画が見せるのは変化よりも同一性だ。垂直に手を挙げて振る身振り、手を差しのべてなされる握手。だがなにより変わらないのは、目を見開いて、口角を上げたまま保つことで生まれる、あの独特の笑顔である。子どもの頃に身につけたものだと最後にわかる。1953年の戴冠式がテレビ中継されたことでも名高いエリザベスはメディア時代の申し子であり、膨大な視聴覚アーカイブに記録されている。本作はそこから手と顔の身振りを抽出した。

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