狼たちの墓標の映画専門家レビュー一覧

狼たちの墓標

「友へ チング」のユ・オソンと「僕の彼女を紹介します」のチャン・ヒョクが共演した韓国ノワール・アクション。大規模開発に湧くビーチリゾート地・江陵の開発利権を巡り、仁義を重んじるやくざ者キルソクと新興組織のボス・ミンソクとの熾烈な抗争が始まる。本作が初長編のユン・ヨンビン監督が、自身の出身地である江陵(カンヌン)市を舞台に、リゾート開発を巡る欲望と裏切りを活写。ユ・オソンは地に根を張る昔気質のやくざ者キルソクを、チャン・ヒョクは冷血漢のミンソクを演じる。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    「アウトレイジ」などを想起させる昔気質のヤクザとより現実的な後続世代の対立という軸は悪くないし、多少は観客への説明があっても良かったようにも思うものの、あくまでも銃を使わずナイフやバットでの打撃にこだわろうとするヤクザたちの美学にも惹かれる。色気とサイコパス要素を兼備したチャン・ヒョクと無骨さや不器用さを全身で体現するユ・オソンの好対照な二人をはじめ、イイ顔のおっさん勢揃いの役者陣は説得力十分だが、展開やアクションはやや盛り上がりに欠ける。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    リゾート地の利権で争う各組織の幹部たちは人情に厚い者、暴力的な者、欲深い者等々、わかりやすいキャラ付けをされている。しかしその裏には秘めた思いがあり、次第に分かち難く混じり合っていくところに本作の深みがあるはずだが、宙空に目をやりタバコを吹かすなんて定番な演出を多用し、その心情を曖昧に示したり、単に台詞で思いが表現されてしまうのが歯痒い。なにより諍いの中心にあるリゾートホテルの存在感の無さが本作の具体性の無さの大きな原因のように感じる。

  • 文筆業

    八幡橙

    ユン・ヨンビン。「工作」のユン・ジョンビンと一文字違いの、新たなる俊英誕生か。海辺の地方都市・江陵を舞台に、裏社会の男たちが仁義なき世代間抗争を繰り広げる。情と秩序を重んじる地元の頭キルソクVS血も涙も礼儀もない狂犬ミンソク。「友へ チング」以来変わらぬユ・オソンの熱のある無骨さと、「火山高」以降一作ごとに研ぎ澄まされてゆくチャン・ヒョクの抑えた凄味。映像や台詞、人物造形に監督独自のこだわりも見えつつ、最後はやっぱり王道の正面対決が見たかった!

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