僕と彼女のファースト・ハグの映画専門家レビュー一覧

僕と彼女のファースト・ハグ

中国の喜劇集団・開心麻花で活躍するコメディアン、チャン・ユエンが監督・脚本・主演を務めるラブコメディ。潔癖症のピアノ教師バオ・バオと、ズボラだが曲作りの才能を秘めたミュージシャンのウェンヌワン。心に傷を抱える2人が出会い、音楽番組で優勝を目指す。共演は「ジェイド・ダイナスティ 破壊王、降臨。」のリー・チン、「こんにちは、私のお母さん」のシェン・トン。
  • 映画評論家

    上島春彦

    潔癖症の若者と肉食系女子の恋というのはアジア映画に昨今ありがちな路線である。しかし二人がアクシデンタルに出会ってしまうまでのバックストーリーが徐々に明らかになる過程が実に可笑しい。何かと不愛想な霊柩車の運転手をはじめ、脇のキャラも充実。CGを効果的に用いて、おとぎ話っぽく変換された最後の街角の光景には、現代中国へのアイロニカルな視線も漠然と感じさせる。とはいえ、それらをひっくるめて物語は結局、現状肯定を強迫的に明確にさせられている印象が強い。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    重度の潔癖症である主人公の無機質な部屋や、ヒロインの色彩鮮やかで雑多な部屋、精神病患者の集まる人工的な自然園など、メリハリのある画面展開は観客を決して視覚的に飽きさせない。監督と脚本と演者を兼任したチャン・ユエンの、目に表情のない顔を使った独特な芝居が特徴的。しかしながら、映画というよりも企業が作ったキャンペーン動画や広告動画を観ている感はやや否めない。ここでもSNSや動画配信サイトのリアクションが、世界からの受容を表現するお気軽な便利道具。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    ハッピー・ムービーをうたう本作が人類の中のどういった層に向け制作されたのか、筆者には見当もつかない。予定調和で幼稚極まりない物語と、KーPOPアイドルのMVのようなポップな色が躍り、影のない画作りから推測するに、恐らく中国の少年少女たちをハッピーにするために作られた作品なのだろう。映画の蝶番になっているはずのミュージカル・シーンは楽曲のクオリティが低すぎて何の説得力もなく、東アジアにおけるメジャー映画の存在論的悲哀と向き合うだけの時間が過ぎた。

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