アルピニストの映画専門家レビュー一覧
アルピニスト
世界でも有数の岩壁や氷壁、断崖絶壁を、たった独りで命綱もつけずに自らの手と足だけで登る「フリーソロ」のスタイルを貫く若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー映画。米国アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得した映画「フリーソロ」主演のアレックス・オノルドが「彼はクレイジーだ!」と語るなど、世界的なアルピニストたちから一目置かれているマーク。彼は2016年にロッキー山脈の最高峰ロブソン山(標高3954メートル)に単独登頂するなど、次々と新たな記録を打ち立てる。だが、そんな偉業を成し遂げながらも、SNSに背を向け名声を求めない性格から、世間的な知名度はほぼ皆無。知られざる若き天才にカメラを向けたのは、これまで数多くの登山にまつわるドキュメンタリー映画を製作してきたピーター・モーティマーとニック・ローゼン。登山経験も豊富な二人が、圧倒的な臨場感と迫力の映像で、究極のクライミングと謎に包まれた登山家の素顔を記録した。
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映画監督/脚本家
いまおかしんじ
マーク=アンドレ・ルクレール。カナダ生まれの23歳のアルピニスト。彼は階段の下のスペースで寝起きするような変人。寝袋が破れてたってガムテープ貼って過酷な冬山に行く。彼は束縛を嫌う。急に行方不明になる。制作チームが、「困った」とあたふたしているのが面白い。で、とうとう事故が起こる。やっぱりか。いつこれが来るのかとずっと身構えていた。死ぬことを予感していた若者の、神がかりのようなクライミングが記憶に残る。猿みたいに壁をひょいひょい進む。
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文筆家/女優
唾蓮みどり
すいすいと山の壁を登っていってしまうその姿は、動物的なしなやかさがあり美しい。生活や名誉欲のためではなく、ただ純粋に楽しむためだけの登山する若きマーク=アンドレ・ルクレールの姿に魅了されつつも、命綱がない状況で挑戦することなど、死とあまりにも接近している状態を黙って見ることしかできない状況を手放しに楽しめる余裕が私にはなかった。彼を撮りたい気持ちはわかる。だが本当に気楽に彼の人生を見てしまってよかったのか。何とも言えない葛藤が今も続いている。
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映画批評家、東京都立大助教
須藤健太郎
登山とかクライミングとか何も知らない。もちろんマーク=アンドレ・ルクレールというアルピニストのことも初耳だ。死と隣り合わせの世界。GoProとドローンの映像はいかにもスポーツバー(行ったことないけど)でループ上映されていそうな見目麗しいものだが、こんなすごい人がいるのかと夢中になって見ていた。だからそれだけに、彼の死がこんなかたちで物語化されていることに違和感を抱く。彼の死をドラマの転機とすべきではない。それはこの映画の出発点であるべきだった。
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