#マンホール(2023)の映画専門家レビュー一覧

#マンホール(2023)

「マスカレード・ホテル」シリーズの脚本家・岡田道尚が原案・脚本を担当、「海炭市叙景」の熊切和嘉がメガホンをとったタイムリミット・サスペンス。社長令嬢との結婚前夜、サプライズパーティで酩酊した川村俊介は、マンホールに転落。脱出を試みるが……。出演は「ピンクとグレー」の中島裕翔、「マイ・ブロークン・マリコ」の奈緒、「LOVE LIFE」の永山絢斗。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    ワンシチュエーションものに興味がない。閉じ込められた場所からの脱出なんて、手法だけの映画になるしかないからだ。でもたまに社会の閉塞状況の暗喩だったりして、やられたと思うこともないではない。しかし本作には見事に何もない。ネタバレ禁止らしいから何も書けないが(批評するなと言ってるのも同じだ)、映画の中でしか存在し得ない人間を見せられても心は動かない。復讐譚だし。これがベルリン? 久々の熊切和嘉、どうせならもう少しマシな転向を。これを経てどうなるか?

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    閉鎖空間、限られた道具の活用、信頼と裏切り、どんでん返し。様々な脱出劇を連想させるサスペンスだが、今日的なのは主人公の頼みの綱がスマホであること。電話、GPS、カメラ、SNS。それらは脱出のためのツールであると同時に、姿を見せない犯人が仕掛けたトラップでもある。穴という伝統的でリアルな枷と、ネット空間という現代的な仮想現実の罠。結末までスリルが途切れない。岡田道尚の精緻な脚本を熊切和嘉が映像化。撮影の月永雄太、美術の安宅紀史も力量を発揮。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    公私ともに幸せ絶頂の好青年風の営業マンが、極限状態へと追いつめられ、化けの皮が次々とはがれていく展開は想定内だが、終盤近くにもなって、ここまで大きな仕掛けを施すと、主人公がなぜ自分の居場所を特定できずにいたのか疑問が残るし、あれこれ推理をめぐらせてきた観客に対しても、裏切りに近い禁じ手ではないか。もう少し時間配分を考えて前倒しできていれば、ジャンルが途中で一変するユニークな作品になり得たかもしれないが、端折り気味に風呂敷を畳み損ねた印象も。

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