ブリティッシュ・ロック誕生の地下室の映画専門家レビュー一覧

ブリティッシュ・ロック誕生の地下室

    音楽評論家ピーター・バラカンがセレクトした映画を上映する“Peter Barakan’s Music Film festival 2022”の1本。1960年代初頭、英国のロックが誕生した時期の様子を、関係者のインタビューから振り返る。ジンジャー・ベイカー、ジャック・ブルース、エリック・バードンらのミュージシャンが出演。
    • 映画評論家

      上島春彦

      ここ数年、音楽ドキュメンタリーの秀作が多い。これはローリング・ストーンズ等のグループの下地を形成するブルーズの影響を掘り下げた点が特に秀逸。おかげでシスター・ロゼッタ・サープといった黒人音楽家に注目が集まるようになってくれて嬉しい限り。エリック・クラプトンの姿が見られないのは寂しいものの、クリームのほかのメンバーの肉声は貴重。白人が黒人音楽を搾取したという言い方は確かに真実ではあるが、当時の英国の若者の素直な憧れが持つパワーを認めてあげなきゃ。

    • 映画執筆家

      児玉美月

      一時代の若者たちが求めたミュージシャンらの毒やユーモアが迸る証言や記録映像は、ファンにとってはさぞ貴重なものなのだろう。この枠でも数々の音楽に関するドキュメンタリー映画を取り上げてきたが、本作で想起したのは「ジャズ・ロフト」だった。同作ではNYのロフトという場所に立ち籠める熱気や当時の空気感が画面に刻印されていたが、本作では地下室のそういった様相を捉えられない。淡々とインタビュー映像が流されてゆく編集に、映画的な意匠の貧相さを感じてしまった。

    • 映画監督

      宮崎大祐

      単純な音楽ドキュメンタリーとしてだけではなく、イギリスの戦後文化史の検証映像としても楽しめた。イギリスといえば、音楽にしろファッションにしろ、システムとの闘争を前面に押し出した文化を展開してきた国である。しかし、それらのアティチュードのいしずえには戦後イギリスに持ち込まれたアメリカのR&Bがあるという。イギリスのユース・カルチャーのイメージを形作るような、自由で反抗的な生き方をもたらしたのがアメリカのマイノリティ音楽というのはなんとも興味深い。

    1 - 3件表示/全3件