散歩時間 その日を待ちながらの映画専門家レビュー一覧

散歩時間 その日を待ちながら

不安を抱えながらも懸命に生きる人々の生活を切り取った群像劇。コロナの影響で結婚式を挙げることができない亮介とゆかりのために、友人たちが郊外の家でパーティーを開いてくれる。しかし、ゆかりは夫の隠し事を知ってしまい、祝いの席に不穏な空気が漂う。監督は、「僕たちは変わらない朝を迎える」の戸田彬弘。出演は、「由宇子の天秤」の前原滉、「君の膵臓をたべたい」の大友花恋、「プリテンダーズ」の柳ゆり菜。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    舞台となった2020年11月を想う。コロナにも結構慣れて、閉塞感もわりと薄かったような。それ故か、どこか薄ぼんやりした群像劇。重いことも軽く言う、または言わない。そういう若者たちでドラマを作るのは難しいと言えば難しい。しかし、せっかくコロナ禍のリアルを描くなら、ちゃんと取材して生きた人物を描けなかったか。なんか頭の中で書いた台詞ばかりで。いや、頭で書くんですけどね。役者はみないいのに。そしてまたAFF。散歩とか言ってないで、ちゃんと苦しんで作ろうよ。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    コロナ禍によるステイホームの状況の中で生きる人々の群像劇。ホームパーティーを開いたり、フードデリバリーで働いたり、学校行事がなくなったり、帰省できなくなったり。ありがちな設定の中で、それぞれにもどかしさを感じている人々が、流星雨の夜に空を見上げる。コロナ禍を描いた映画が濫作される一方で、生々しかった蟄居の感覚は次第に薄れてゆき、あとに残るのは人物一人ひとりが抱える心の重さしかない。この作品が凡庸なテレビドラマのように軽いのはなぜだろう。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    当たり前のように享受していたことが、いかにかけがえのないものであったかを痛感させられているコロナ禍を背景に、劇的というほどではないが、いつか振り返った際に、何となく記憶に残り続けているに違いない一日を追う、ささやかに見えて意外に壮大な群像劇。新婚早々ピンチを迎える夫婦から、恒例行事の中止で想い出をつくりそびれた中3生まで、ままならない日常を強いられる各世代の男女が、舌足らずも率直な対話を重ねて前を見据える姿に、心がふわりと軽くなる好篇。

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