シャイロックの子供たちの映画専門家レビュー一覧

シャイロックの子供たち

池井戸潤の同名小説を「死刑にいたる病」の阿部サダヲを主演に迎え、小説と展開が異なる完全オリジナルストーリーで映画化。東京第一銀行の小さな支店で現金紛失事件が発生する。ベテランお客様係の西木は、部下の北川、田端とともに事件の真相を探るが……。監督は、「空飛ぶタイヤ」の本木克英。出演は、「昼顔」の上戸彩、「パラレルワールド・ラブストーリー」の玉森裕太。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    大前提として池井戸潤の経済小説は概ねよくできているので、誰が脚色しても、誰が演出しても、誰が演じていても、それが初めて(同原作のドラマなどを過去に見てなければ)ならばそこそこ楽しめるのだが、本作は演出に問題あり。パズルのように入り組んだ物語をトレースしていくのに精一杯で、屋外シーンも屋内シーンもロケーションは貧相、シーンの無造作な繋ぎも目立ち、役者の新しい魅力を引き出すこともなく、逆に名の通った役者たちの手癖的演技になんとか助けられている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    ご丁寧に冒頭の舞台劇で、守銭奴シャイロックが完敗する『ヴェニスの商人』の法廷場面を再現してスタートする。そうか、タイトルに呼応する情報として、この舞台劇を入れたって訳か。池井戸潤のこの原作はドラマ化もされているそうだが、大手銀行の支店を舞台にした金を巡る大小の不祥事は、緊張感を誘うほどインパクトはない。それでも楽しめたのは、いつもニコニコしているお客様担当の阿倍サダヲが、必ず何か仕掛けるはずだと予想できたから。そして本木監督は期待を裏切らない。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    阿部サダヲと柄本明の絡む場面に声をあげて笑う。達者な役者の応酬は飽きない。本作原作は未読だが過去にたまたま原作読み&映画鑑賞した幾つかの池井戸潤ワールドと共通の主題を認め、それが良いと思う。それは歴史家ティモシー・スナイダーがリーフレット『暴政』で説く、忖度するな、属する組織に誠実であれ、倫理を忘れるな、自ら調べよ、ちょっとした会話を怠るな、等に重なる。これが社会の悪化に抗する方法だが、これを踏まえつつ、悪と堕落への誘惑も残す語りが面白い。

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