銀平町シネマブルースの映画専門家レビュー一覧
銀平町シネマブルース
監督・城定秀夫×脚本・いまおかしんじによる群像悲喜劇。かつて青春時代を過ごした銀平町に帰ってきた一文無しの青年・近藤。ひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤と、商店街の一角にある映画館・銀平スカラ座の支配人である梶原と出会い、バイトを始める。出演は「愚行録」の小出恵介、「大コメ騒動」の吹越満、「罪の声」の宇野祥平。
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
斜陽産業の定めか、近年世界中で同時多発的に増えている「映画についての映画」。大きくは「作り手サイドの物語」と「劇場サイドの物語」の二通りに分けられるが、本作は地方都市の老舗劇場に流れ着いたワケありの元映画監督という両方取りの都合のいい設定の中、ステレオタイプな登場人物たちが無邪気に「映画っていいよね」みたいなぼんやりしたクリシェを言い合うだけの薄寒い内容。本来は優れた監督、脚本家、役者が揃っているだけに、策やヒネリのなさに?然としてしまった。
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映画評論家
北川れい子
無一文で公園のベンチで寝るしかない映画監督を救ったのは、いまにも潰れそうなミニシアターとそこに出入りする人たちだった。それにしてもここ数年、次から次へと作品を撮り続けている城定監督と、今回は脚本だが同様に監督作の多いいまおかしんじによる本作、挫折と失意を抱えた映画人を、あえていいこ、いいこしているようで、いささかこそばゆい。ホームレスを食いものにする貧困ビジネスの連中なども出てくるが、昭和的人情が色濃い展開は、映画への夢や憧れも徒に感傷的。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
ああ、わかってしまった。私は奥田民生になりたいとは思わないが、いまおかしんじにはなりたい。たぶん、いまおかしんじ脚本作監督作に慰撫されたことのある男はみんなそうなんじゃないか? これはいまおか氏のアイドル化、崇拝というより、自分の生活のなかに自分サイズのユートピアを見出す術を身に付けたい、という感覚だ。快調な城定秀夫演出が死を超えるユートピアを見せた。渡辺裕之と、宇野祥平(川島雄三「わが町」の辰巳柳太郎に迫る)の美しさに慄然とさせられる。
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