よりそう花ゝの映画専門家レビュー一覧

よりそう花ゝ

「シルミド SILMIDO」のアン・ソンギ主演によるヒューマンドラマ。葬儀屋のソンギルは下半身不随の息子と2人暮らし。生きる希望を失っていた彼らだったが、隣の部屋に越してきた天真爛漫なウンソクと好奇心旺盛なノウルの母娘と出会い、再び希望を取り戻してゆく。共演は『ペントハウス』ののユジン、『完璧なパートナー』のキム・ヘソン。監督は長編二作目となるコ・フン。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    資本の論理に従うのか、採算を度外視しても尊厳を守ろうとするのか。葬儀屋という仕事を軸に、階級問題をはじめとして障害やDVのテーマまで盛り込みつつ、困難な時代にあって人間らしい生き方を模索する姿勢は買いたいが、いかんせん演出が稚拙すぎる。特に設定上最も重要なのが明らかな野外の葬列場面での露骨に雨に頼った安直な撮り方は、もう少しなんとかならなかったのか。「太陽は光り輝く」のレベルとまでは言わずとも、もっと大事に撮るための工夫はあって然るべきでは。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    生きる希望を失いかけている息子と父の家族が、わけありだが明るく前向きに生きる母と娘の家族と、貧困者たちで支え合いながら生きる疑似家族という2組の家族と接し、次第に希望を取り戻していく。絶望の淵にある男性へ生きる希望を与える女性のマニックな描き方に疑問も持ちつつも、3組の異なる家族を一挙に描き、そこに社会問題も入れ込んでいく様は意欲的にも見える。しかし最終盤は、さまざまな事柄をオフの説明セリフによって、性急に結び付け、片付けた印象を持った。

  • 文筆業

    八幡橙

    アン・ソンギが語る。顔で。肉体で。あるいは、気を含めた存在として。韓国の葬儀で古くから使われている花喪輿を飾る「紙の花」(原題)を手慣れた様子で作り出す、熟練を感じさせる手。黙したまま現実の理不尽を浴びる、眉間の皺。貧しく、弱き者同士の心の交流を描く本作は、ベタと言えばベタな映画だ。それでも、わけありでありつつ天真爛漫な母を演じるユジンや主人公の息子役のキム・ヘソンなど、演者の力で静かに魅せる。闘病を明かしたアン・ソンギの復帰を強く願いつつ。

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