午前4時にパリの夜は明けるの映画専門家レビュー一覧

午前4時にパリの夜は明ける

「母との約束、250通の手紙」のシャルロット・ゲンズブールが1980年代のパリを舞台に、孤独な少女と交流するシングルマザーを演じたドラマ。深夜のラジオ番組で働くエリザベートは、家出をした少女タルラと出会い、10代の息子と暮らす自宅に連れて帰る。出演は、「8人の女たち」のエマニュエル・ベアール。監督は、「アマンダと僕」のミカエル・アース。第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門正式出品作品。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    不眠症気味の彼女は、朝方までマンションの窓から街を眺める。何かとうまくいかない。失敗しては泣いてばかりいる。ホームレスの女の子と息子が橋で話すシーンがいい。橋から落っこちてびしょびしょの二人。火に当たりながらぎこちないキスを交わす。女の人も図書館で会った誠実そうな男と恋に落ちる。男とのセックス。胸に手術の跡。「気になる?」。彼女にもいろいろあったんだとわかる。家族三人で踊り始め「あなたも入って」とホームレスの女の子も一緒に踊るところが良かった。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    ミカエル・アース監督の息遣いというものがやはり本作からも伝わってくる。柔らかく、ときに脆く繊細で、それゆえに小さな強さが煌めくようなそんな映画を彼は撮る。見終わった後は少しだけ胸が痛む。個人的にとても大切な「サマーフィーリング」、評判の高かった「アマンダと僕」に続き確実に作家性が強く、新作を見たい監督の一人だ。主演のシャルロット・ゲンスブールがとてもよかった。エマニュエル・ベアールが出演していることも個人的にはすごくツボで嬉しくなった。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    「若くて子供みたい」と形容されるタルラの声に「満月の夜」の引用。パスカル・オジエの声のこだまに気付き、涙した。ただ、作劇の基盤に死を据えてきたミカエル・アースが今回はP・オジエの死に依拠したわけで、疑問は残る。マチアスは3年ぶりにタルラと会い、「北の橋」を一緒に見にいく。しかし、彼はその後に龍の滑り台を目にしても、対岸から一瞥するだけで何の気なしに通り過ぎてしまう。女優の死はそういう目配せの対象にすぎない。あたかもそんな具合の切り返しである。

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