ワース 命の値段の映画専門家レビュー一覧

ワース 命の値段

マイケル・キートンが主演・製作を兼任した実録ドラマ。アメリカを襲った9.11テロの発生直後、約7000人ものテロ被害者に補償金を分配する国家的な大事業に挑む弁護士のケン・ファインバーグ。犠牲者遺族の苦悩と向き合いながら、前代未聞の難題に立ち向かってゆく。共演は「魔女がいっぱい」のスタンリー・トゥッチ、「セントラル・インテリジェンス」のエイミー・ライアン。監督は『リトル・アクシデント 闇に埋もれた真実』のサラ・コランジェロ。
  • 映画監督/脚本家

    いまおかしんじ

    やたら真面目そうな弁護士が主人公。彼はすごいオーディオセットの前に座り一人静かに音楽を聴く。真面目でいい人なんだけどちょっと偏屈。融通がきかない。正しさを押し通し行動するがうまくいかない。男は苛立ち落ち込む。周りの人たちがさりげなく彼を助ける。みんな実にいい人だ。男は少しずつ変わっていく。その変化にグッとくる。電車の中で音楽を聴いていてテロになかなか気付かず、周りの人がざわざわしている中、ふと振り返って窓外を見たときの彼の顔が忘れられない。

  • 文筆家/俳優

    睡蓮みどり

    「感動の実話」は往々にして感動するよう仕向けられる。当初、特別管理人となったものの被害者たちの声を聞かなかった“嫌われ者”のファインバーグが徐々に耳を傾けるようになるものの「プロジェクト目標達成のために」というのが透けて見える。優秀なビジネスマンだということはよくよく伝わってくるものの、道徳的な尊厳の話をテーマにするには少し無理がある気がする。「国民にはこう言っておけばいいだろう」と言われているのと何が違うのだろうという気がしてしまうのだ。

  • 映画批評家、都立大助教

    須藤健太郎

    優れた小品だが、うかつに評価はできない。迷いの理由は、「アメリカ vs.合衆国」の構図にあって、本作がアメリカの勝利を謳うのでないからである。アメリカ映画であるためにはやはりウルフを主人公とする必要があった。これはむしろ合衆国の映画であり、アメリカが合衆国に収奪される点が厄介に映る。しかも、アメリカと合衆国の対立は「人間性」と「法(規則)」の葛藤として反復させられ、それに規則を遵守したレシピ通りの映画の格好が与えられる。この巧みさやいかに。

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