わたしの見ている世界が全ての映画専門家レビュー一覧

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「アイスと雨音」の森田想主演のヒューマンドラマ。目的達成のためには手段を選ばない末っ子の遥風は、母の訃報をきっかけに実家に戻ると、出戻りの姉、家業を継いだ長兄、ニートの次兄に実家の売却を提案。家から家族を追い出すため、家族自立計画を始める。監督は、「東京バタフライ」の佐近圭太郎。出演は、「愛の小さな歴史」の中村映里子、「やがて海へと届く」の中崎敏、「東京バタフライ」の熊野善啓。森田想が本作でマドリード国際映画祭外国語映画部門主演女優賞受賞。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    佐近監督の作品は本作が初見なのだが、とても驚いた。冒頭シーンの軽いトリックから、映像的に仕掛けられた細かな目論見が次々にキマっていく気持ち良さ。画面上の人物配置、インサートされる情景ショットなどすべてが的確で、82分間を通して現代社会に一つの「問い」を投げかけていく。その構成のスマートさ、そして最後になってその真意に心を打たれるタイトルのシャープさにも痺れた。ストイックな画面設計にあって、森田想のノースリーブ姿への執着も効果的かつ映画的。

  • 映画評論家

    北川れい子

    私らしい生き方とか、私らしく生きるとか、曖昧に自分探しをする女性が苦手なこちらとしては、この作品の、何に対しても自分の思い通りにならないと気がすまない「私が確立」した主人公は逆に頼もしい。そんな性格のせいで失職した彼女が、ならばと起業を決意、その資金を得るために実家に戻っての話で、成り行きまかせでボーッと生きている兄弟たちがじれったい。家族という生臭い関係をものともせず、路線を変えない彼女を森田想が好演、小気味いい。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    本作については世代や地域によって受け取りかたが異なるかもしれないが私からするとこの剣呑で殺伐とした主人公女性は、詐欺師気質でコントロールフリーク、ふんわりサイコ。だがこういう人は東京あたりにはよくいるしどんどん増えている。だって自分の起業のために実家売りたくて兄や姉の人生を差配し、その地域の荒廃を進行させ、その自覚なく最後はポエム的独白でシメるんだぜ。ヤバい奴すぎる。現代の病理を突く主人公像と主要人物の設定、俳優陣の演技が素晴らしい映画!

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