GOLDFISHの映画専門家レビュー一覧

GOLDFISH

1980年にデビューしたパンクロックバンド『アナーキー』のギタリスト・藤沼伸一が自身をモチーフにメガホンを取った人間ドラマ。人気絶頂期に傷害事件を起こし活動休止したパンクバンド『ガンズ』を30年ぶりに再結成させようとメンバーたちが動き出すが……。藤沼伸一は音楽も担当。音楽を続けながらもくすぶった思いを抱えるイチをパンクバンドを組んだ経験を持つ永瀬正敏が、かつて傷害事件を起こしたハルを「終末の探偵」の北村有起哉が演じるほか、ロックバンド『怒髪天』の増子直純、ミュージシャンで芥川賞作家の町田康らが出演。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    バンドの再結成モノ。元メンバーを集めようとするが、酒に溺れる北村有起哉が難関。結局、復活ライブを前に北村は自殺するが、なぜかは分からない。見えないものが見える、わからないことがわかるのは辛いと語られるがオカルト過ぎて。そこをちゃんとやらないと再結成までの時間も意味も何も見えない。役者が魅力的なゆえに描かれていない内面が見え隠れするが、過剰に戯画化されたキャラが邪魔をする。語り口は懐かしいが、これでは音楽に遠く及ばない。ノット・サティスファイド。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    亜無亜危異のギタリストが自分たちのバンドをモチーフに撮ったフィクションだから、現実と違うところも、重なるところもあるだろう。献辞の通り、核にあるのは再結成を前に50代で急逝したメンバー逸見泰成への思い。ニルヴァーナやセックス・ピストルズが映画になったように、亜無亜危異も映画になると思う。ただそれを当事者が作るのは難しい。ロックは生きざまだから、エンドロールの現実の亜無亜危異のライブがすべてを物語ってしまう。フィクションが拮抗し得るのか。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    藤沼伸一監督の亡きバンドメンバーへの哀悼の念が、全篇ににじむ。再結成までの30数年間の音楽業界の目まぐるしい変遷のようなものが、背景としてもう少し具体的に描かれていれば、時代も無視して我が道を爆走し続ける永遠のパンク野郎・アニマルをあいだに挿み、厳しい世界をギターの腕一本でたくましく生き抜いてきたイチと、何かと対応できずに堕ちていくハルとの、非情にすれ違う運命の切なさが一層劇的に引き立ち、監督の願いが託されたエンディングも、さらに活きたと思う。

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