REVOLUTION+1の映画専門家レビュー一覧

REVOLUTION+1

「赤軍派-PFLP 世界戦争宣言」の足立正生が、安倍元首相銃撃事件の容疑者・山上徹也をモデルに、現代社会に横たわる問題に迫ったドラマ。両親と兄妹に囲まれ、裕福な家庭で育った川上達也の人生は、仕事と人間関係に疲れ果てた父の自殺を機に一変する。出演は「止められるか、俺たちを」のタモト清嵐。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    即席で完成まで漕ぎ着けたことは吉と出たか凶と出たか。吉と言えるのは、まだ記憶が生々しいが故に「観てみたい」と純粋に思わせてくれたこと。リスクを引き受け、短期間で役を仕上げたタモト清嵐のプロ意識にも感心。凶と言えるのは、想定以上に容疑者に世間の同情が集まったことからくる微妙なズレか。安いデジタル映像による、報道の焼き直し的モノローグで綴られる再現ドラマパートがまどろっこしい。作家の特性をふまえるなら、もっと妄想に振り切った方が潔かったのでは?

  • 映画評論家

    北川れい子

    昨年9月の安倍元総理の国葬に合わせて単館公開された本作の“未完成版”の情報は聞いてはいたが、ざわつくタイトルはともかく、作り手側の、主人公に対する心情、忖度が妙に中途半端な再現劇だったとは。当然、事件後にマスコミなどが散々報じた背景状況の通りに展開する。そういえばかつて誰かが、革命はロマンだ、と言っていたが、それを意識したように、唐突に、主人公が星を目指しているというのも曖昧で甘っちょろい。家族に流されない妹のキャラクターが唯一頼もしい。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    期待以上ではない。題材と製作の速度、タモト清嵐の演技と存在感のほかに、もっとこちらを撃つものが欲しい。控えめに言っても私は元首相の暗殺とその犯人の来歴におもしろさを感じてしまっている。おそらくその点で一致する本作が、安倍晋三や現体制を批判しない人たちを巻き込めなさそうなこと、そういう不器用さ、粗さが悔しい。観念に頼りすぎたのでは? 本欄に並ぶ他の英字題名作品がやっていたようにモノによって細部から語るべきだったか。しかし必見の映画だ。

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