妖怪の孫の映画専門家レビュー一覧
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脚本家、映画監督
井上淳一
何を隠そう「パンケーキを毒見する」を断った監督の一人は僕だ。ビビったワケではもちろんなく、映画として面白くなるはずがないと思ったからだ。完成した作品は面白くなるように懸命に努力していた。しかしそれが面白いか、また映画になっているかは別問題。映画はいつからテレビでやれないことをやるカウンター・メディアになってしまったのか。安倍晋三は本当にクソだ。死んだからといって、その罪が消えることはない。安倍が生んだモノ、安倍的なモノはこの国で続いている。→
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日本経済新聞編集委員
古賀重樹
出色なのは安倍晋三政権のメディア戦略への斬り込み。安倍は第一次政権の失敗の反省に立って、メディアをコントロール。SNSや動画配信も活用し、若者層の取り込みを図る。まさにポピュリズムの手法で、選挙に勝ち続けた。その異様な周到さを丹念に追うことで、既存メディアの凋落も浮き彫りにする。ただ映画全体としては総花的で、結論を急いでいるのがもったいない。地元下関での利権、両親への反発と祖父への心酔は、それぞれに1本のドキュメンタリーを編める話だ。
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映画評論家
服部香穂里
よくも悪くも戦後日本に道筋をつけた祖父に対抗意識を燃やし、それとは一線を画す道を模索した実父に学ばなかった“妖怪の孫”の政治家人生。国家権力の下で自明の理不尽が罷り通ってきたからくりを、顔出し厳禁の官僚や専門家の証言から紐解く。題名に引っ張られすぎのアニメーションパートは効果的とは言い難いが、好戦的な風潮に流れる現状に危機感を募らせる“愛娘の父”として腹を括った監督の覚悟に、長期政権で培われた不穏なイズムの継承を阻止せんと痛感させられる渾身作。
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