高速道路家族の映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
厳しい社会のリアリティを追求するのか、おとぎ話のような性善説を強調するのか。あまりに中途半端な設定と、家族への自己犠牲や奉仕の精神を過剰に強調する脚本には首を傾げざるを得ない。また、家族がホームレスとなった原因として、申し訳程度に父親が過去に騙された経験を示唆することは、そもそもなぜ彼が働けないかの説明としても説得力に欠けるし、周縁化された人々の苦難に寄り添うどころか、単に可哀想な被害者として記号的に消費しようとする態度の現れでしかない。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
犯罪者や加害者は、より広い視点で見ると、より大きな悪事の被害者でもあるという構図は、それ自体特に創造的な視点ではないにしても、十分にわかる。しかし、その加害者でもあり被害者でもある、というバランスの調整がうまくいっておらず、しばしばキャラクターが豹変し、映画を壊してしまっている印象。いままでは軽いコメディタッチの様相だったのが、急に夫が発狂して暴れ回り観客を置いてけぼりにするシーンなどは、そのバランスの悪さが端的に現れているように見えた。
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文筆業
八幡橙
明らかに「万引き家族」+「パラサイト」路線を狙ったと思われるが、描かれる貧困から社会的背景や現代の抱える病理はほぼ汲み取れなかった。なぜ父親は働かないのか。なぜ無計画に子供を増やし、妻子に路上生活を余儀なくさせるのか。その理由が最後までわからない。それでは寸借詐欺も笑い飛ばせず、深刻な泣きの演技に涙することもできない。演出以前に、思わせぶりな空気のみで乗り切ろうとした脚本の問題か。子役二人の頑張りと、新たな一面を見せたラ・ミランがもったいない。
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