はざまに生きる、春の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
3年前の本誌ベスト・テン個人賞で主演男優賞に宮沢氷魚、新人女優賞に小西桜子を選んだ自分は、当然大きな期待をして本作に臨んだのだが、キャラクターの造形に終始違和感が。高圧的な上司、薄っぺらい同棲相手と、ヒロインの周囲の男性を極端なほど類型的に描くことで、発達障碍の画家をその対比の中に閉じ込めている。これでは、自分で選んだはずの職業に適性がなく、自分で選んだはずの恋人に思いやりのかけらもないヒロインが、公私混同仕事で一発当てただけにしか見えない。
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映画評論家
北川れい子
波長が合うのか、いつも誰かの波長に合わせているのか、あるいは彼女本来の波長が自閉症の画家と同じなのか。奇妙な振る舞いをする画家の取材に立ち会った彼女は、取材後にその画家が自閉症だと知るのだが、えーっ、事前のリサーチなし? 編集者になって3年目、なんてユルいの!がなぜか画家はそんな彼女に心を開き、彼女の方も画家に特別な感情を抱く。画家役の宮沢氷魚が「レインマン」のD・ホフマン張り!の演技をしているが、おままごとのような場面が続き、しかも甘過ぎる。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
観るうちに、登場する青年画家が描く絵に満ちる色彩と同様の、ブルークリスタルのごとくピュアでフラジャイルで、若干クルーエルなエモーションが全篇から立ち昇る。それはすなわち、裸の大将山下清にガチで恋したらどうなるのか、こうなる、という物語。アスペルガー画家の言動に惹かれ、癒やされながらも、結局は自分がそれとは異質の、日々自らを損耗、疲弊させている一般性のほうに属しているがために彼によって困惑させられ傷つくという、興味深い関係、構造が描かれていた。
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