ライフ・イズ・クライミング!の映画専門家レビュー一覧

ライフ・イズ・クライミング!

世界選手権4連覇を成し遂げた視力を失ったクライマー・コバとその相棒・ナオヤが、アメリカへ旅に出て、想像を超えるクライミングに挑むまでを描いたドキュメンタリー映画。最強で最高のコンビが、不可能とも思える無謀な挑戦に臨む。監督は、本作が映画デビュー作品となる中原想吉。2016 年にTV番組『ザ・ノンフィクション』でコバを密着取材。その後、再会を果たし、本作のメガホンをとった。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    パラクライミングという競技では、何よりも仲間の「声」が命綱となる。といったような、これまで想像もしたことがなかった知見を得ることができる。クライマックスのフィッシャー・タワーズ登頂シーンにも素直に感嘆させられる。しかし、本来なら編集で落とすべき本筋とは関係のない無駄なくだりの多さ、劇中クレジットのフォントの無造作さなど、アマチュア的な細部が足を引っ張っている。せっかくの風景の壮大さが、おそらくは技術的理由によって表現しきれていないのも気になった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    命懸けでこのドキュメンタリーを完成させたに違いない方々の異論反論を承知で書けば、盲目の登山家・小林幸一郎と、小林の目となる視覚ガイド・鈴木直也の互いの立ち位置は、アイドルと推しの関係に近いものがあると思う。さらなる絶景、さらなる高みを目指しての一蓮托生的な関係と冒険。むろん、どちらもプロで、誇りうる実績を共有しているのだが、危険な岩山に挑む小林への数ミリ単位のサポートは、まさに推し(押し?)ならではで、その信頼感も素晴らしい。

  • 映画文筆系フリーライター。退役映写技師

    千浦僚

    全盲のクライマー小林幸一郎氏と視覚ガイド鈴木直也氏の存在感とアクションで魅せる爽快なスポーツ冒険ドキュメンタリー。ヤバイ絶景を登っていく小林氏。だがその概観を本人が見ていないという事態。これは三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」の音響、ダリオ・アルジェント「ダークグラス」での視覚と映像でも浮上した転倒的構造だが、本作はさらにクライミングを題材としたドキュメンタリーであることで触覚による知覚をも喚起させる。畠山地平による無意識に響き沁みる音楽も良い。

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