探偵マーロウの映画専門家レビュー一覧

探偵マーロウ

タフで孤独な紳士、女性にもてるが友情を重んじ、どんな時も権力に媚びない男フィリップ・マーロウ。推理小説家レイモンド・チャンドラーが生み出したそんな魅力的な私立探偵が、1930 年代のハリウッドの闇につつまれた“真実”に迫るハードボイルド・ミステリー。40年以上のキャリアを誇るリーアム・ニーソンが、ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャムなどの名優が扮したマーロウを演じ、出演100 本記念作品となった。「クライング・ゲーム」(92)でアカデミー賞脚本賞を受賞したニール・ジョーダンが監督。共にアイルランド出身であるリーアムとのタッグは4度目となる。謎の美女クレアに「女は二度決断する」(17)でカンヌ国際映画祭最優秀女優賞に輝いたダイアン・クルーガー、クレアの母に通称“演技の三冠”(アカデミー賞、エミー賞、トニー賞)を受賞しているレジェンド、ジェシカ・ラング。原作はブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィルが“ベンジャミン・ブラック”名義で著した『黒い瞳のブロンド』(『ロング・グッドバイ』の続編として本家の公認を受けている)。
  • 米文学・文化研究

    冨塚亮平

    殺し屋としては若干迫力に欠けるとしても、老探偵が時折必要に駆られて披露するアクションとしてならば説得力十分。そこまで動けない彼の格闘をどう演出するかという、ニーソン近作が直面してきた問題に意外な角度から解決を与えた本作は、例によって老いのテーマを扱いつつも、それを真正面から深刻に取り上げるというよりは、大人の余裕や色気として表現する。記念すべき一本でニーソンは、気心の知れたスタッフと共に歳を重ねても軽妙さを失わない新たなマーロウ像を作り上げた。

  • 日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰

    降矢聡

    人から人へと数珠繋ぎにつながって真相に迫っていく探偵もの映画にあって、要所要所の役者の存在感はとても重要なものだろう。その点、本作はフィリップ・マーロウを演じるリーアム・ニーソンを筆頭に、ダイアン・クルーガー演じる女性やその母親のジェシカ・ラングなどが衒いも気負いもなく、極めて自然に、それぞれの美しさと存在感を見るものに印象付ける品の良さがある。またリーアム・ニーソンの老いと長身という特徴をユーモラスに使った演出も余裕を感じさせて心地よい。

  • 文筆業

    八幡橙

    ニール・ジョーダンの下、念願のフィリップ・マーロウに挑んだリーアム・ニーソン節目の作品だけに、期待が先走ってしまった感も。個人的には異端とされるアルトマン版のグールドがベストマーロウだが、こちらはミッチャム寄りの正統派。いや、正統派マーロウというより正統派ニーソン、というべきか。全体にキャラが薄く、小洒落た台詞もそこだけ空回りして、逆に物語の理解の妨げに。100本の快挙を祝しつつ、今後は脚本重視でじっくり作品選んでほしいと僭越ながら希望。

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