魔女の香水の映画専門家レビュー一覧
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映画・音楽ジャーナリスト
宇野維正
フィルモグラフィーからその作家性を窺い知ることは困難なのだが、安定した演出手腕をみせる監督の宮武由衣が、この謎の企画をオリジナル脚本で成立させていることに恐れ入った。旧来のジェンダー規範を壊そうと鼓舞するのではなく、その中で勝ち上がってきたであろう年長の女性による、新しい時代の女性アントレプレナーへのエンパワーメントというテーマはなかなかユニーク。しかし、終始気になったのは、この作品のどこに観客がいて、どうやって届けるつもりなのかということ。
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映画評論家
北川れい子
現代人は匂いと音に敏感。特に匂いは香水であっても迷惑がられたり。その香水をキーワードにした本作、宮武監督自身のオリジナル脚本ということで、かなり期待したのだか、うーん、ひところ流行ったレディースコミックものの令和版! むろんだから駄目ということではないが、仕事も夢もない主人公が、魔女と呼ばれている香水店のオーナーに出会ったことでついに起業家にという話は、かなり雑でご都合主義、魔女のエピソードに至っては、おいおい! 香水の効用も押し付けがましい。
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映画文筆系フリーライター。退役映写技師
千浦僚
キザり仏語発音とかヒくけど大事な主題はあった。この映画のなかで、出てくる男がほとんどバカというか女性と並ぶ・関わるとひどい存在なのだがそれを全然否定できない。社長と名刺交換して、しゃ、しゃちょう! と恐れおののくとか、その社長とヒロインの交友に、テメエ人脈誇ってんじゃねえ! と圧をかけるとかこんな頭が病気な会社員男がおるかと思いきや多数実在する日本社会。本作はいわばそれに対する「香水バカ日誌」。世の腐臭に抗するために女性らには香水が必要だろう。
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