縁路はるばるの映画専門家レビュー一覧
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米文学・文化研究
冨塚亮平
主人公がなぜか次々に魅力的な女性たちからアプローチされる「モテキ」を思わせるベタで都合の良い設定には乗れない観客も多そうだし、スマホ画面を写せば若者に受けると思っているかのような弛緩しきった撮影は、もう少しどうにかならなかったのかと思う。だが、ラブコメとしての斬新さには欠けるとしても、民主化運動以降の香港に住み続ける若者たちがそれぞれに異なる形で抱く、「どこに誰と住むのか」をめぐる理想と現実、田舎の現状をめぐる記録としては非常に興味深い一本。
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日本未公開映画上映・配給団体Gucchi's Free School主宰
降矢聡
気になる女性がみな僻地に住んでいるため、香港中を旅して会いにいくという少し面白いアイデアのラブコメディ。しかし、香港の地理や風土を適度に楽しめる作りになってはいるものの、都市の撮り方や現代の恋愛といったものをクリティカルに映し出しているかと言われると、あまり新鮮味はないように見える。また、女性と別れたら、次の女性に。また別れたらすぐ違う女性へといった単線的で流れ作業的な展開は、アイデアばかりが先行した出来の悪いゲームのようにも感じられてくる。
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文筆業
八幡橙
なるほど、これが香港の新世代なのか。アプリ開発者の青年と僻地に住む5人の女性たちとの微妙な関係を軽やかに綴った恋愛譚。変革の時代を正面から見据える重い作品が続く中、敢えて未来に目を向けて力み過ぎずさりげなく海外移住という選択や今後の生き方について描かんとする意欲は十分感じ取れる。ただ、この手の作風では最大の要となるはずの人物造形、会話や設定の妙にパンチが足らず何とも惜しい。フェリーで島々を巡る旅は、今は遠き香港への旅情をくすぐり、心躍った。
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