海辺の恋人の映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
最初の一口は美味しいのに飲んでいると途中でぬるくなって金属の味もして甘味料の甘さがべったり口に残ってしまう500ミリリットル缶チューハイの恋。なのにやめられず飲んでしまう。青春の典型的景色とじゃれあい、だけれども大切な思い出と心は未熟でも行えるセックス。自分では「多少のセクハラ」ぐらいに思っているであろう、「昔は良かった」と抜かす男の行為がいくら物語内で成敗されようともあまりに酷く、画面に映っているのが女性だけになるのを待ちながら見てしまった。
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フランス文学者
谷昌親
カメラマンをめざす女と売れない大道芸人が出会い、一緒に暮らし、すれ違いから別れ、数年後、ともに自分の道を歩きつつひとときの再会を果たす……。既視感のある物語だが、海辺の風景と前向きなヒロインの姿が心地よい。そのヒロインの姿勢をなぞるかのように映画そのものも軽やかなフットワークで撮られている。それだけに、個展で目玉となる写真が他の展示作品と違いすぎることや海外で修行したはずの大道芸の進歩のなさが気になる。細部こそが映画という嘘を成立させるのだから。
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映画評論家
吉田広明
「ダメ男と、そういう男に惹かれるヒロインというキャラ」以上のものではない。なぜダメ男なのに惹かれるのか、それが掘り下げられないと、別れる辛さも葛藤も分かるまい。その苦闘を描くことこそが、キャラを人物へと変貌させるはずなのに、「十年後」に飛ばして、ご想像にお任せしますは戦闘放棄である。それで十年後すれ違い、お互い成功している姿見て、良かったね、って目配せ。何だそれ。ヒロインが写真家だからか、ラストで過去映像が回想風に流れるのもかなりダサい。
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