白鍵と黒鍵の間にの映画専門家レビュー一覧

白鍵と黒鍵の間に

池松壮亮が2人のジャズピアニストを演じた人間ドラマ。ジャズピアニスト志望の博は銀座のキャバレーにふらりと現れた、謎の要望で『ゴッドファーザー 愛のテーマ』を演奏するが、その曲をリクエストでき、演奏を許されている者は限られており……。「素敵なダイナマイトスキャンダル」の冨永昌敬監督がジャズピアニスト・文筆家の南博による回想録『白鍵と黒鍵の間に -ジャズピアニスト・エレジー銀座編-』を映画化。南博がモデルの主人公を“南”と“博”という2人の人物に分け、現実と幻想の間を駆け抜ける狂騒の一夜を描く。サックス奏者の松丸契や歌手のクリスタル・ケイも出演し、演奏シーンに参加している。
  • 文筆家

    和泉萌香

    1988年の銀座が舞台とテロップに出るが、映るのはキャバレーやクラブと店内ばかり、ほんの少しの路地裏にネオンと、時代設定を曖昧にする舞台……だが登場する「イメージされる、昭和にいそうなおじさん」たちとせりふにちょっぴり失笑&戸惑い。「あの曲だけは弾いてはいけない」の文句と、池松壮亮がひとり二役のピアニスト、との事前情報をいれて見たのだが、なんと“そういうこと”ではないのにびっくりしてしまった!僭越ながら、SFに振り切った脚色でもう一度見たい。

  • フランス文学者

    谷昌親

    映画はビルの谷間の薄汚い路地を移動撮影でとらえたショットから始まるが、これがいかにも富永昌敬監督らしい。この路地に転落することで、主人公の南博は変身するわけだが、それ以前に、銀座のある一夜、彼はジャズピアニスト志望の博と高級クラブで半ば自堕落にピアノを弾く南に分裂するのであり、それもまた博から南への変身を歪んだ時間のなかに描いたものだ。映画ならではの時空を操る魔術とジャズの即興演奏が「ノンシャラント」(無頓着、投げやり)に結びついた快(怪)作。

  • 映画評論家

    吉田広明

    キャバレーという場で音楽を磨くために銀座に来た男と、そこで職業ピアニストをしているうち初心を忘れた男。同じ一晩の話にしているためこの二人が分身として描かれるが、同一人物の過去と現在にしない理由がよく分からない。時間軸を捻じれさせているから、時空間の不明瞭な「ビルの隙間」の場面がありうるわけだが、こんな異次元を設定しなければ主人公の変化が描けないわけでもあるまい。主題に正面から向き合うことを避け、奇を衒って深遠に見せているだけではないのか。

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