ファルコン・レイクの映画専門家レビュー一覧
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映画監督
清原惟
その匂いも感じるくらいの風が吹き水面が揺れて、名付けられない関係性がふたりの間に生まれる瞬間を見た。幼さの残る少年少女は言うまでもなくうつくしい。青春映画のまばゆい瞬間は、それが思い出になったときの色褪せや幻滅を想像させるけど、この映画はそうではない。立ち尽くす枯れ木、風に揺れる葉っぱ、移動する陽の光、透ける髪の毛、嵐の夜の寝室、自転車で走り抜ける姿。フィルムという素材の中で自然と人間の営みが溶け合って、一つの音楽のような感触を残していった。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
〈年上の女〉ものというジャンルがあり、思春期の青少年が女性に翻弄され、通過儀礼を経て大人へと成長を遂げるパターンが遵守される。だが、この映画は微妙に違う。13歳の少年と16歳の少女の間に介在するのはイノセントでありたいという志向、淡い欲望の疼きといった相反する感情である。16ミリフィルムでとらえた湖畔の景観は薄暮や明け方ばかりで、いつしか〈死の気配〉が漂い出す。そして虚言の応酬の果てに悲劇が起こる。たぶんこの映画の霊感源はレイ・ブラッドベリの『みずうみ』である。
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映画批評・編集
渡部幻
宣伝が想像させるよりも遙かに特異な思春期映画。冒頭、ほの暗い湖畔に死体みたいな影が浮かんでいる。夏のホラー的な幕開けだが、間もなく“その影”は泳ぎ出して水辺に波紋を拡げる……「悪魔のいけにえ」風の16mm撮影によるざらついた夏の映像美が、詩的に謎めいて、奇妙に生理的。14歳になる少年が16歳の少女(すばらしく粗野な眉のかたち!)に惹かれるが、思春期とは時に一種の“ホラー”に他ならない。ゆえに監督は水底に足のつかぬような不安定さを敷き詰めているのだ。
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