Pearl パールの映画専門家レビュー一覧

Pearl パール

「ミッドサマー」や第95回アカデミー賞作品賞受賞作「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のスタジオA24が製作した「X エックス」の前日譚にして、最高齢の殺人鬼パールの若かりし頃を描いたエクストリーム・ホラー。スターの華やかな世界に憧れるパールは、人里離れた農場で厳格な母と体が不自由な父の愛のもと、抑圧された生活をおくっていた。無垢なる少女が解き放たれたとき、無邪気さと残酷さをあわせもつ比類なきシリアルキラーが誕生する。前作に引き続き、タイ・ウェストが監督・脚本・製作・編集を務め、ミア・ゴスがパールを演じている。
  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    シネフィルの心をくすぐったホラー「X エックス」の前日譚。前作が「悪魔のいけにえ」へのオマージュであるなら、これは「オズの魔法使」へのホラーなオマージュ。ミュージカルの要素や往年のテクニカラー映画の極彩色を用いて、キュートなホラーに仕上げている。ウェス・アンダーソン的ホラーと言ってもいいか。そのひねったコンセプトは評価したいのだが、いかんせん全然怖くなくドキドキしない。シネフィル系映画監督が陥りがちな、頭デッカチで活劇的昂揚感のないジャンル映画。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    ハリウッド黄金期を彷彿させるオープニングに期待が高まる。映画スターを夢見るパールが、スクリーンではなく農場で暴れる殺人鬼としてスポットライトを浴びる構造はパールの夢を暗に叶えていて皮肉が効いている。主人公の異常さを肯定するかのようなメロドラマ調の音楽はそのミスマッチ加減が笑いを誘うが、全体的にあざとさが目に付く。話自体凡庸だしキャラクターも記号的。ミア・ゴスの凄まじいエネルギーが映画を牽引している。ラストの笑顔の狂気たるや。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    古典映画風のタイトルデザインに、過剰にゴージャスな音楽がかぶさるオープニングからしてもう、ねらいがはまりすぎて笑ってしまう。象徴的な構図もよく考えられていて、ミュージカル風シーンの撮り方も、すごく「わかってる人」が作った感じ。全部毒母のせいという話かと思っていたら、母がぶち切れるシーンに至って突然母にシンパシーがわき、かつ、娘は母の反復だったとわかるのだった。ミア・ゴスの長台詞も圧巻。これらを台詞以外で表現する工夫があってもよかったかもだけれど。

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