裸足になっての映画専門家レビュー一覧

裸足になって

内戦後のアルジェリアで、大怪我を負ってバレエダンサーになる夢と声を絶たれた女性が、リハビリ施設で出会ったろう者の女性たちにダンスを教えることで、再び生きる情熱を取り戻していく物語。製作総指揮は「コーダ あいのうた」でろう者の俳優として初のアカデミー助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァー。アルジェリア出身、現在はフランス在住の女性監督ムニア・メドゥールが、長編デビュー作「パピチャ 未来へのランウェイ」のリナ・クードリを再び主演に迎え、故国で手を携えて立ち上がる女性たちの力強さを描いた。主人公のフーリアが手話をモチーフにしたコンテンポラリーダンスを披露し、言語の壁を超えた肉体表現として、どんな台詞よりも雄弁に女性たちの想いを伝える。
  • 文筆業

    奈々村久生

    冒頭でトウシューズに包まれていた足は後半でそれを脱ぎ捨てる。イサドラ・ダンカンを彷彿とさせるこのモチーフに、アルジェリア女性の闘いが重なる。過酷な環境でダンスを志すフーリアの踊りは、その切実さと怒りを体現しているゆえに顔つきが険しく、ステージで「魅せる」表情とは違う。これはアルジェリア女性の虐げられた状況、また公共の場で体を使った表現がタブー視されている現状を反映しているともいえるが、踊りの自由や楽しみを味わう描写としてはあまりに重い。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    誰の人生も、どこの国の歴史も、それぞれに悲惨。けれど自分が得意だったものの一部を奪われても、命さえ失くしてなければ残った部分を使って何かをして、そこに誰か他人がいれば一緒に何かを始めることができる。命まで奪われたとしても、生き残った者が何かをすれば何かが始まる。とりあえず体か心の動く部分を動かしてダンスしてみるのはいいことだ。踊るとテンションがあがる。楽観的な「めでたしめでたし」で映画は終わるわけもなく、かといって可哀想なまま終わるわけでもない。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督はアルジェリアにおける女性弾圧を描く、ムニア・メドゥール。主演のリナ・クードリもメドゥールと再タッグとなる。もはや売れっ子俳優だが、祖国の問題には積極的に取り組む意志を感じる。今回クードリが演じるのはバレリーナを目指しながらも、テロリストの男に階段から突き落とされ、骨折の大怪我とトラウマで声を失う女性の役。それでも映画は柔らかい光や布の優美な動き、軽やかなダンスで、女性の柔軟性や芯の強さを描く。国外脱出を図る者が後を絶たないなど、国の内情も伝える作品だ。

1 - 3件表示/全3件