炎上する君の映画専門家レビュー一覧
-
ライター、編集
岡本敦史
主人公の女性2人が腋毛を見せながら踊り狂う冒頭、韓国の女性活動家団体を追ったドキュメンタリー「バウンダリー:火花フェミ・アクション」を思い出すが、あそこまでのパワーや鋭さは感じられない中篇コメディ。世にはびこる性的蔑視や偏見、抑圧に対する怒りをパフォーマンスとして表明する親友コンビが、高潔な思想とわびしい現実の狭間でもがくドラマには、確かに胸を打つ場面もある。が、悪ふざけのような演出、粗いコント風の芝居づけが、真に迫る瞬間をたびたびフイにする。
-
映画評論家
北川れい子
42分、いささか食い足りないのは否めないが、世間の風潮にたいする二人の女性の不満と落とし前のセンスの良さに拍手を送りたい。現実が変えられないなら、現実など無視して自分たちは好きに生きよう。説明を極力排した演出も痛快で、何よりキャスティングが大金星。親友同士役のうらじぬのとファーストサマーウイカの表情と演技と妙ちきりんなダンスは、いつまでも観ていたくなる。足下が燃えている“炎上男”については突っ込みを入れたくなるが、ふくだ監督、この作品の続篇を!
-
映画評論家
吉田伊知郎
たどたどしさを残しつつ、それが独自の魅力だった長篇第1作「おいしい家族」から瞬く間に間然するところがない商業映画の担い手となった監督が、原点回帰を見せる。「極私的エロス」の武田美由紀的な雰囲気を持つ主演の2人はウーマンリブの時代からやって来たかのようだが、高円寺で撮影されたことで時空間を超越した寓話的な世界が生まれ、抑圧された女性たちへの憤りも炎上男も包み込む。予想外のウイカのハマりぶりにも瞠目。中篇だけに問題の提起に留まったが、賽は投げられた。
1 -
3件表示/全3件