おしょりんの映画専門家レビュー一覧

おしょりん

同名小説を原作に、明治時代の福井県でメガネ作りに挑んだ人々の物語を映画化。庄屋の長男・増永五左衛門とその弟・幸八は、村をあげてメガネ作りに挑む。二人は幾度となく挫折するが、五左衛門の妻・むめは兄弟を支え続ける。やがて彼らは最後の賭けに出る。出演は、「TAP THE LAST SHOW」の北乃きい、「HiGH&LOW THE WORST X」の森崎ウィン。監督は、「えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。」の児玉宜久。
  • 文筆家

    和泉萌香

    当時にタイムスリップする場面での壮大で美しい雪景色の後は、ほとんど人物が配置された室内の画がほとんどになるが、文化財であるという撮影地の家々の内部、登場人物たちの着物の色彩、美しい紅葉、金属や炎の輝きと、細部まで見つめることの楽しみに溢れている。何度も流れる感動的な音楽に少々ムズムズしてしまうものの、北乃きい、森崎ウィン(パッと振り返り目が合う、ベタなのにいい!)はじめ、真の主役である職人たち、共演者たちの表情も生き生きとチャーミング。

  • フランス文学者

    谷昌親

    明治時代に、福井の片田舎でメガネづくりを一から始めた人びとの物語に登場するのは、いずれも誠実でひたむきな人物ばかりで、観ていて清々しい気持ちになれる映画だ。しかし、それぞれの人間にあるはずの多面性が排除されることで、映画そのものが一面的なものに見えてしまう。せめて兄嫁と義理の弟のあいだの許されざる恋をもう少し描いていれば、多少は変わったかもしれない。映画が一面的になるなかで、本来は映画的にはおもしろくなるはずのものづくりの部分も色あせてしまった。

  • 映画評論家

    吉田広明

    冒頭に福井の観光CMが流れ、新幹線がトンネルに入って過去=映画本篇となる。狙いが分かりやすくて結構だ。福井でメガネ産業が盛んになった理由を描く地場産業振興物語。詰まる所インバウンドでメガネの福井の観光宣伝。にしても「新しいことに挑戦、苦難を経て成功へ物語」のモデルが大抵明治という明治信仰は何とかならないのか。決して破綻に至らない程度の葛藤をほどよくまぶし、見た後に多幸感以外何も残さない安逸な世界。ロケに使える古い建物が残っているのには感心した。

1 - 3件表示/全3件