ジェーンとシャルロットの映画専門家レビュー一覧

ジェーンとシャルロット

セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの娘、シャルロット・ゲンズブールが初監督作として母ジェーンを撮影したドキュメンタリー。娘たちへの想い、これまで感じた苦悩や後悔、長女ケイトを自死で失って以降の深い悲しみを、優しい時間の中に紡ぎ出す。第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション、第48回セザール賞最優秀ドキュメンタリー賞ノミネート。
  • 文筆業

    奈々村久生

    数年前、アメリカのフェスで歌うシャルロットを間近に見た。カリスマ的な存在感の母ジェーンに対し、いまだ少女のような佇まいはどこかフラジャイルで身近に感じられた。そんな彼女が打ち明けた母親への愛とそれを失う怖れは、「依存」といった言葉では形容できない、複雑で繊細な母娘の関係性に踏み込む。「母に近づくためにこの映画を撮った」という監督シャルロットの動機と手段は、井口昇監督の「わびしゃび」(89)にも似て、被写体とカメラの間に宿る感情が何とも美しい。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    築地でメシ食ってるところも、たぶん撮ったんだろうから見たかったな。どえらい女から生まれた女が関係のぎこちなさを乗り越えて母が何を考えていたのか聴こうとするが、なにせ二人とも大スターでロケーションも孫も美しすぎるしお膳立ても整いすぎてて、一般の母娘の葛藤を考える参考になるのかな……? 娘はラース・フォン・トリアー作品の常連だから、つい、あっちの「ありえねえ話」のほうがよほどリアルだって思ってしまいました。セルフ・ドキュメンタリーってむずかしいね。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    特異な環境に置かれた母子の、娘による監督作。二人に距離があったと言っても負の感情ではなく、馴れ合いができないという類のもので、今の関係性も悪くなく感じる。彼女らの会話も感情のぶつかり合いにはならず、娘が落ち着いて母の言葉を引き出していく形だ。シャルロットが盤石な家庭を築いているのも、母の激しい人生を反面教師としているのかもしれないが、映画としては冷静で見やすい。セルジュ・ゲンスブールの遺品を見つつ、奇妙な生き物の記憶を語るような二人が何気なく面白い。

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