キリング・オブ・ケネス・チェンバレンの映画専門家レビュー一覧

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

モーガン・フリーマンが製作総指揮を務め、無実の黒人が白人警官に殺害された事件を、90分リアルタイム進行で映画化したサスペンス。就寝中に医療用通報装置を誤作動させてしまったケネス・チェンバレン。安否確認のため、白人警官3人がやって来るが……。出演は「ハンニバル」のフランキー・フェイソン。
  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    R・クーグラーの「フルートベール駅で」が黒人青年の最後の1日を描いたのに対し、こちらは射殺までの1時間余りをほぼリアルタイムで。冒頭からずっとクライマックスみたいな演出なのはところどころ引き算が必要だと思うし、ラストショットのあとに現実の音声を長々と流すのは冗長だろう。それでもこの冗長さを選択せずにいられなかった怒りが作り手にはある。こうした映画の基になる実話はいつなくなるのか。悪条件が重なり、善意は届かず、事態がこじれていくさまがやりきれない。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    NYで無実の黒人老人が白人警官に自宅に押し入られ、射殺されるまでの実話を90分間のリアルタイム進行ドラマで再現。双極性障害(躁うつ病)を患い、警官隊を部屋に入れまいとパニックになる老人と、マッチョなプライドゆえなんとしても部屋に突入したい警官たちの緊迫感溢れる描写が見事。周囲の住民、老人の家族、老人と警官隊との板挟みになる倫理的な新入り警官といった配役も効果的。アメリカのダークサイドをこれほどスリリングな映画に仕上げるのもアメリカの底力。

  • 俳優、映画監督、プロデューサー

    杉野希妃

    人を守るためのシステムが発端で、その人の命が奪われてしまった事実に言葉を失う。令状もないし相当の理由もないから警官を家に入れない、ただ静かに寝たいだけなんだと懇願する老人。一方、彼に対して不信感を募らせ、狂騒状態に突入していく警官。扉の内と外の攻防がただただ虚しい。断絶の扉を無理やりこじ開けても根本的な解決にはならない。警官らしさとは、正義とは、手続きとは。この事件の真の問題は何なのか、我々ひとりひとりが対峙せずにはいられない。

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