愛にイナズマの映画専門家レビュー一覧
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ライター、編集
岡本敦史
映画公開の頃にはコロナ禍も終わるだろうと考えた楽観性(あるいは希望)は否定するまい。とはいえ先日発症済みの身としては、感染者が1人も登場しないのに「今の世界を描いた」ような態度はいかにも視野が狭い。そして中盤以降の家族のドラマとも無関係すぎる。主人公の新人監督が悪辣なプロデューサーに「人間をもっとよく見て」と再三言われるのは、作り手の実体験か、恨み節まじりの自虐か。物語が進むにつれ「俺もそう思う」と頷いてしまうのは、敵役に同調するようで悔しい。
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映画評論家
北川れい子
“映画の映画”も時と場合で進化(異化?)する。愛にイナズマなら、カメラは雷鳴? いや、雷鳴は大袈裟だが、連作短篇ふうな章立ての進行と、ベースの映像に主人公たちが手にするカメラの映像を交えた演出は、余裕とユーモアがあり、章ごとの切り上げかたも小気味いい。オリジナル脚本で監督デビューするはずだった花子の無念の頓挫。調子のいいプロデューサーや、鼻持ちならない助監督はパターンだが、実家に戻っての後半は花子のキャラも一転、カメラももう嘘は許さない!
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映画評論家
吉田伊知郎
過剰な設定と、カリカチュアされたキャラクターに乗れるかどうかに尽きる石井作品。若手女性監督が自作を奪われる過程が、これでは監督交代もやむなしに見えてしまう(嫌な助監督の三浦貴大が絶品)。粗雑で語彙もないが、それでも映画が撮りたいが見えてこない。主人公が周辺にカメラを向けるときの暴力性に無頓着なのも引っかかる。生き別れの母の?末を携帯で聞くだけで済ませてしまうのは、糸電話や日記を駆使する「アナログ」と続けて観たこともあり、思うところ多し。
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