サムシング・イン・ザ・ダートの映画専門家レビュー一覧

サムシング・イン・ザ・ダート

シッチェス・カタロニア国際映画祭ホセ・ルイス・グァルネル批評家賞受賞のスリラー。LA近郊の古アパートで出会ったリーヴァイとジョンは、結晶体が発光し、浮遊するのを目の当たりにする。二人は現象についての手がかりを探すうち、深い迷宮に嵌っていく。「シンクロニック」のジャスティン・ベンソンとアーロン・ムーアヘッドのコンビが、監督・脚本・撮影・主演を担当。
  • 映画監督

    清原惟

    今私は何を観ているのか?と思うような、観たことのないタイプの映画だという感じがしたのだが、そのカテゴライズのできなさが謎であり、面白さだと思った。陰謀論めいた街の謎や、超常現象も、すべて冗談みたいだけれども、その謎を追う二人の主人公たちは妙に現実感がある。観た後に知ったことだが、監督二人が主演であり、現場を三人で回していたというから、この妙な感じにも納得した。やはり作り方というのは、否が応でも映画の画面にも現れるものだということに勇気をもらった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    作り手曰く、LAという都市へのオマージュらしいが、残念ながらLAの魅力など画面から全く伝わってこないし、低予算のインディーズの弱点だけが露呈している。主人公二人がアパートの一室で遭遇する“超常現象”の陳腐さ、それをドキュメンタリー映画に仕立てるメタ映画風な発想にも既視感がある。土台、このワン・アイデアで2時間弱の尺を語りきるには無理があるのではないか。パンデミック下での企画らしく、全篇に漂う荒涼たるざらついた“幽閉感覚”だけが奇妙にリアルであった。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    社会から孤立したような二人の男が出会い、部屋で浮遊する結晶体の光に遭遇、常軌を逸したドキュメンタリー制作を開始するが……。奇才ベンソンとムーアヘッドの巧妙なDIYスタイルは、否応なくパンデミック下の終末感、閉塞感、無力感や倦怠感を思い起こさせる。「X-ファイル」的な怪現象の推測がみるみるうちに陰謀バラノイアへと発展していく様子はブラックコメディ的であり、同時に、むしろ「ナイトクローラー」「アンダー・ザ・シルバーレイク」に連なる現代人の危機をめぐる寓話とも取れるのだ。

1 - 3件表示/全3件

今日は映画何の日?

注目記事