Firebird ファイアバードの映画専門家レビュー一覧
Firebird ファイアバード
ロシアの無名俳優セルゲイ・フェティソフの回想録『ロマンについての物語』を映画化した愛の物語。1970 年代のエストニア。役者志望の二等兵セルゲイは、将校のロマンと運命的な出会いを果たす。だが当時、同性愛はタブー。発覚すれば厳罰が待っていた。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
主演俳優に合わせて(?)全員英語を話しているという謎事態だがそれはさておき、宣伝ヴィジュアルを見ると軍隊内での禁断の愛の物語みたいだけど、実はプロットの中間点で主人公は除隊するのであり、映画がよくなるのはむしろここから。画面に変化がつくほか、どこまでリアルかはわからないけどモスクワの演劇学校の場面など興味深い。残念ながら展開は既視感だらけで掘り下げが欲しいが、ラストはそれなり胸を打つ。二人の外見の組合せが「君の名前で僕を呼んで」っぽいのは意図的?
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編集者/東北芸術工科大学教授
菅付雅信
冷戦時代ソ連占領下エストニアの空軍基地を舞台に、2人の青年の秘められた愛を実話に基づいて描いた物語。エストニア出身MV監督で知られるペーテル・レバネが監督しただけに映像は美しく、二人の主演男優は日本のBL(ボーイズ・ラブ)漫画のキャラのように美しい。しかし、それらの環境と美形キャストに酔っているような仕上がりで、シナリオに唸ることも新たな美意識や世界観の提案があるわけでもない。ジェンダー題材の映画はその題材力に寄りかかり過ぎている悪しき実例。
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俳優、映画監督、プロデューサー
杉野希妃
美青年二人の視線の交わりと繊細な戯れに陶然とし続ける100分だった。何度か出てくる性的なシーンでの、炎を連想させるオレンジと青の使い分けが印象的。海でのキスシーン後、二台の戦闘機が高速で飛行するショットは二人の関係と行く末を暗示するようで心がざわついた。男二人に翻弄されるルイーザの思い違いから絶望までを丁寧に描いているのも良い。本作のヒットで、エストニアでは同性婚が承認されることになったという。ストレートで誠実な映画がもたらす力に勇気づけられる。
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