室町無頼の映画専門家レビュー一覧

室町無頼

室町時代中期に徳政一揆を起こした蓮田兵衛の戦いを描いた直木賞作家・垣根涼介による同名時代小説を、「あんのこと」の入江悠監督、「ディア・ファミリー」の大泉洋主演で映画化したアクション時代劇。大飢饉と疫病が国を襲うなか、兵衛は無頼どもを率いて幕府軍に挑む。蓮田兵衛を演じた大泉洋は本格的な殺陣・アクションに初挑戦。無敵の棒術を身につけ戦う才蔵をアイドルグループなにわ男子の長尾謙杜が、兵衛の宿敵となる骨皮道賢を「おまえの罪を自白しろ」の堤真一が演じる。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    地獄のような庶民の窮状や、大スケールで描かれる一揆の場面など、現代に直結するメッセージ性をこれでもかと押し出す部分には作り手の本気を感じる。が、室町時代の文化や生活、メンタリティをどう描くかという好奇心や野心はさほど感じられず。また、おそらくジャンル映画的感性がもともと薄いので、クンフー映画やマカロニウエスタン風の味付けも上滑り気味。「侍タイムスリッパー」は時代劇再興には技術とセンスが不可欠であると証明したが、それを痛いほど裏付けてしまった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    なんとCMや司会などテレビに出ずっぱりの大泉洋が三船敏郎をやっている。いや、そう見える。無骨さや台詞回しは三船より薄味だが、演じている人物やその行動は「七人の侍」「用心棒」「椿三十郞」の三船を連想させ、観ていていささかくすぐったい。そして時代劇初挑戦の入江監督。“一揆”というエキストラの数からして半端ない集団闘争の長丁場は破壊、炎上、大乱闘と映像もかなりパワフル。けれどもそこに至るまでの話があちこちに分散しているせいか、いまいち盛り上がりに欠けもったいない。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    ジャンル映画に次々挑む入江悠の姿勢に毎回瞠目する。今回は、これまでほぼ手つかずの時代背景とあって自由度は高いだけに、京を終末感溢れる無国籍な街に作り変えて欲しかった。才蔵の修行シーンがショウ・ブラザーズのカンフー映画のようになるだけに。魅力的なキャラと設定が溢れるだけに交通整理に追われた感あり。謀略、情報戦など裏になっている設定が、台詞で説明されるだけに終わるところも少なくない。東映時代劇というより往年の角川映画が作る時代劇が甦ったよう。

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