はじまりの日の映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
主人公と、物語を進行させるためだけに存在しているような都合のいい登場人物たちや台詞にくわえ、肝心の二人が打ち解けていく様子がまるでダイジェストで、現実の強度がゆるいために、夢のミュージカルシーンがひどく浮いて感じられてしまう。男が(彼らに名前を与えないのも効果的と思えないが)薬物に走ってしまったのにはさまざまな葛藤があったのだろうと想像するも、娘との和解シーンもとってつけたよう。歌声はもちろん素晴らしいのだが、ドビュッシーの言葉の引用も的外れでは。
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フランス文学者
谷昌親
中村耕一、そしてとりわけ遥海の歌がすばらしいし、ミュージカルシーンの華やかさにも目を奪われる。だがそうした音楽関係の要素を取り除いてみると、劇映画としてのあり方に物足りなさを感じてしまう。主人公の二人が隣人で、職場も同じという偶然があっても悪くはないが、それが映画的に活かされているかというと疑問だし、なにより二人が古ぼけたアパートに流れ着いているという設定が重要であるのに、そのロケーションがほとんど書き割りのようになってしまっているのが残念だ。
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映画評論家
吉田広明
一度地に堕ちた歌手と、同じく底辺に沈んでいた女性が、共に助け合い、歌によって再び活路を見いだす。舞台は日本の地方都市、主人公らが住むのは路地のアパートだが、女性が歌うのは英語、しかもその歌詞は前向きで多幸感に満ちており、なおかつ歌い方も朗々、ミュージカル風に演出される部分もあって、ほとんどディズニー作品のように聞こえる。泥臭い物語と歌が水と油、昭和の平屋住宅にシンデレラ城が乗っかっているようだ。「PERFECT DAYS」を連想させるのも不利に働く。
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