罪深き少年たちの映画専門家レビュー一覧

罪深き少年たち

実際の事件を題材にした「折れた矢」「権力に告ぐ」を手がけたチョン・ジヨン監督による、1999年参礼(サムレ)ナラスーパー事件を基にした社会派サスペンス。強盗殺人事件の犯人として少年3人が逮捕されるが、ある情報を得たファン刑事は再捜査に乗り出す。実話を基に、少年たちの無実を証明しようとする1人の刑事が警察と検察の暗部を炙り出していく姿を描く。「キングメーカー 大統領を作った男」「ペパーミント・キャンディー」など韓国を代表するベテラン俳優ソル・ギョングが“狂犬”の異名を持つ敏腕刑事ファン・ジュンチョルを演じるほか、「ヘウォンの恋愛日記」のユ・ジュンサン、「野球少女」のヨム・ヘランらが出演。
  • 映画監督

    清原惟

    街の小さな商店で起きた強盗事件を発端に、警察の不正に立ち向かおうとした警察官と、裁かれることのなかった真犯人たちの話。権力に刃向かい干されてしまった警察官と共に、冤罪を着せられた可哀想な少年たちが立ち上がるというストーリーは、定番の流れや演出でありながら応援したくなる。映画としては少しご都合主義に感じられる部分もあったが、この映画を観た日にちょうど袴田事件の再審のニュースが流れたというタイミングもあって、主題としても考えさせられるものがあった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ソル・ギョングの風貌は質朴で愚直なまでのヒューマニズムゆえに孤立し苦悩する人物像がすぐさま想起される。実話ベースの冤罪事件の真相を探る本作でも〈狂犬〉という異名をもつ敏腕刑事という触れ込みとは裏腹に、滲むように表出される優しさを隠蔽することはむずかしい。15年という歳月を行きつ戻りつしながら、刑期を終えた少年たちの現在と事件当時を交錯させる語り口もあまりに古色蒼然というべきだろう。とはいえ往年の〈警視庁物語〉シリーズを彷彿させる妙な安定感は捨てがたい。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    冒頭に「実話に基づいたフィクション」と字幕が出る。時代背景は1999年から2016年。冤罪に青春を台無しにされた少年たちの物語で、熱血刑事が杜撰な捜査の真相に迫る。しかしこれは臆面もなくお涙頂戴的な脚色を施した作品であった。絵に描いたような正義漢、卑劣漢、臆病者が彩る感情のドラマは古めかしく、過去と現在を行き来する構成も効果的とは言えない。要点から要点に飛躍できる便利さがあったにしても、余程の趣向を凝らさなければ、肝心要の人の心に太く繊細な筋を通すことはできないのだ。

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