新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!の映画専門家レビュー一覧

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!

「恋は光」の小林啓一が、映画初出演となる櫻坂46の藤吉夏鈴主演で贈る社会派青春エンターテインメント。名門・私立櫻葉学園高校に入学した所結衣は、学園非公認の新聞部で新米記者“トロッ子”として活動を開始。教師たちの不祥事に切り込んでいくが……。共演は「ベイビーわるきゅーれ」の高石あかり、「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」の久間田琳加。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    監督の小林啓一、脚本の大野大輔、主演の藤吉夏鈴・高石あかりと、新世代の才人が一挙に集結しながら、一見まるで欲のない作りで楽しませる学園スクリューボールコメディ。体制に逆らう学生新聞部員のアナーキーな冒険を描くところは漫画『映像研には手を出すな!』を想起させ、適度に温度の低いコミカルな演出は初期の周防正行も思わせる。社会派要素を自然に盛り込む心意気にも好感が持てるが、もう少し「適度」から逸脱しても良かった。音楽が案外冴えないのも惜しい。

  • 映画評論家

    北川れい子

    若い観客層向きのとんでも学園騒動だが、“私“のナレーションに加え、各人物の説明台詞や後だし情報が多い脚本と演出はかなり甘いし、学園の闇がまたチープなおふざけレベル。ではあるが、活字離れや新聞離れが言われて久しいいま、学園の目玉という設定の文芸部と、モグリの新聞部のスパイ合戦とはかなり大胆で、一方から踊らされているとも知らず二股をかける”私“の迷走は、さしずめ文学少女の勇み足? 新聞部部長役の高石あかりが、刷り上がっていく新聞のインクの臭いにうっとりする場面にはほっこり。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    時代錯誤な設定も台詞も瞬時に観客に了解させ、没入させてしまう小林啓一は、小さな世界を周到な演出で拡張させ、学校をスパイ戦の舞台へと変貌させる。随所に一歩間違えれば白々しくなりかねない箇所が出てくるが、戯画的な描写とリアルの配分が神がかり的に絶妙。学生たちが皆良いが、藤吉と高石による〈躍動する低温演技〉が絶品。全篇にわたって空間の切り取り、カットの繋ぎが突出し、一人部室に取り残された新聞部員が立ち尽くすさりげないロングショットも忘れがたい。秀作。

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