コンセント 同意の映画専門家レビュー一覧

コンセント 同意

フランス中が騒然となったヴァネッサ・スプリンゴラによるベストセラー・ノンフィクションを映画化。既存の道徳や倫理への反逆者として時代の寵児となった50歳の作家ガブリエル。少女ヴァネッサは、彼と同意の上で性的関係を結び、その歪な関係にのめり込んでゆく。出演は、本作が映画初主演で、第49回セザール賞 女性新人賞にノミネートされたキム・イジュラン、「グランド・ジャーニー」のジャン=ポール・ルーヴ。監督は「マイ・エンジェル」のヴァネッサ・フィロ。劇場公開に先駆け、2024年3月、横浜フランス映画祭2024にて上映。
  • 文筆業

    奈々村久生

    観ることに大きな苦痛を伴う体験であったことは否定できない。だが今はこの痛みに耐えなければいけない時期なのかもしれない。小児性愛者による性加害は被害者の立場があるだけにタブー視を避けられない側面もあり、本作が実話ベースであることはさらにハードルを上げるが、フィクションの中でこそきちんと犯罪として描かれ人の目に触れることに意味がある。文壇の権威が犯罪を芸術にすり替えてきた光景のおぞましさ。それがいかに被害者の人生を破壊するか、表現が現実を救うことを切に願う。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    人をコントロールすることで自我を補強したい人間がいる。支配されることで自我を失って「もの」になりたいと願う人もいる。その欲望は大人同士で、相手との信頼関係のもとセックスの場だけで満たすぶんには問題ないが、関係が日常を侵食してはならない。傷ついてる「子ども」は、尊敬している人に愛されて性的に支配されることで自分は何者かになれると夢みてしまう場合がある。この映画は中学生に授業で(もちろん個々のフラッシュバックへのケアは、なされつつ)観せるといいと思う。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    まだ経験が浅く是非を判断するのが難しい未成年から、交際の同意を得たと盾に取る大人は卑劣としか言いようがない。邪悪で頭がよく回る男が、少女を相手に彼女が狭量で自分本位であるかのように言いくるめる脚本と演出は、非常にリアルゆえに気分が悪い。今でこそ小児との性交渉は厳しく処罰されるが、文化人の趣味嗜好となると特別視してしまうのは、改めて危険だと感じる。“自分は選ばれた”とのぼせてしまう少年少女への注意喚起で、本作を見せて水を差すのは有効かもしれない。

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