スリープの映画専門家レビュー一覧
スリープ
ポン・ジュノの助監督を務めてきた新鋭ユ・ジェソンの初長編となるスリラー。出産を控えたスジンの夫ヒョンスが、ある晩から奇行を繰り返すようになる。次第にエスカレートする夫の奇行に恐怖を感じたスジンは、夫婦で睡眠クリニック受診を決意するが……。出演は「82年生まれ、キム・ジヨン」のチョン・ユミ、「パラサイト 半地下の家族」のイ・ソンギュン。
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文筆業
奈々村久生 |スリープ
睡眠中の夫の奇行が心身機能の異変か超常現象かの境を行き交うストーリーテリング。「ローズマリーの赤ちゃん」(68)に連なる系譜で、本作の核心は、最も身近で信頼すべき相手を信じられなくなる恐怖だ。愛する人が得体の知れない存在になっていく。その葛藤と戦う妻をチョン・ユミが好演。夫役のイ・ソンギュンも昨年韓国での公開時に観たときはまだ存命だった。惜しむらくは映像が暗いこと。光量を落とせば暗さが写るわけではなく、闇は光との対比であり、影の濃さで体感したかった。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ |スリープ
不眠で生活に支障をきたしたり悪夢に殺人鬼が現れるのではなく、よく寝てるのに動きだして昼間はしない異常行動をしちゃう。夢遊病者は内面の無意識で抑圧(幸せな夫婦が抑圧が強いのは現実によくある)から解放されてるのか、外部の超自然の悪意に呪われているのか、ホラー映画の文脈では峻別困難だという脱構築ホラー。章立てで視点が変わるのは「来る」と同じだが、あそこまで無惨ではない。睡眠中に自分で顔を掻きむしるのが事件の発端で、アトピー持ちの僕としては複雑な気持ちに。
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映画評論家
真魚八重子 |スリープ
イ・ソンギュンは韓国の俳優の中でも三本指に入るほど好きだったので、亡くなった今その姿を観るのは悲しい。映画の構成は章立ての通り、妻の出産を境に狂気に憑かれているのが夫から妻に移行して見える。無防備な赤ん坊を前にして、母性が女性の正気を奪うのは正しいかもしれない。後半のチョン・ユミの演技は恐ろしく、何をしでかすかわからない演出と芝居は秀でている。ラストは芝居なのか、本当に霊が抜けたのか、観客に判断を委ねるタイプで、珍しく面白い宙吊り感があった。
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