夏目アラタの結婚の映画専門家レビュー一覧
夏目アラタの結婚
ベストセラーコミックス『夏目アラタの結婚』の実写映画化。乃木坂太郎による同名ベストセラーコミックスを「十二人の死にたい子どもたち」の堤幸彦が映画化。日本を震撼させた連続バラバラ殺人事件を発端に、児童相談所職員が連続殺人犯の死刑囚にプロポーズすることから始まる衝撃の獄中サスペンス。元ヤンキーで児童相談員の夏目アラタを「映画 太陽の子」の柳楽優弥、日本で最も有名な死刑囚に「カツベン!」の黒島結菜。共演は「碁盤斬り」の中川大志、「あんのこと」の佐藤二朗。
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ライター、編集
岡本敦史
かなり強引な性格描写と饒舌なセリフ、キメ絵の連続で読者を引っ張るような原作漫画のストーリーを、映画版ではどんな工夫で説得力をもたせるのかと思いきや、工夫を投げていて驚いた。原作のキャッチーな部分だけを抽出し、無駄な努力を放棄した作りは、ある種の実写化アプローチとして業界では有効なのかもしれない(観客にではなく、プロデュース側にとって)。「ブルーベルベット」そっくりの曲で悪夢感を醸し出すセンスの世代感は「サムシング・ワイルド」好きの堤幸彦監督らしい。
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映画評論家
北川れい子
ナントぶっ飛んだラブコメディなの! いや、ドタバタした動きや笑いは一切ない。自分のことを“ボク”と言う若い女性死刑囚・真珠と、目的のためなら手段を選ばずとばかり、彼女と獄中結婚する元ヤンキーの児童相談所職員・夏目アラタ。二人のデート?!は警官が脇に控えた面会室。そもそもアラタの目的からしてかなり乱暴なのだが、面会での会話は当然、?み合わない。その過程で二人の人生が回想的に語られていくのだが、柳楽優弥と黒島結菜の演技がどこかポップなのが痛快で、人騒がせのわりに消化はいい。
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映画評論家
吉田伊知郎
受けの演技に徹する柳楽によって映画が牽引される。陰惨な背景に比重がかかりすぎないよう軽妙に描く点においてはこの演出で正解なのだろうが、現実が虚構を追い抜く時代においては、この軽薄ぶりを素直に楽しめるかどうか。アクリル板越しの死刑囚との会話によって状況が二転三転し、見透かされ、コントロールされていくという「羊たちの沈黙」以来の設定だけに新味はなく、死刑囚との結婚も「接吻」の後では衝撃は薄い。黒島は熱演ながら硬軟自在に翻弄するところまでは行かず。
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