チネチッタで会いましょうの映画専門家レビュー一覧

チネチッタで会いましょう

「監督ミケーレ黄金の夢」でヴェネツィア、「ジュリオの当惑とまどい」でベルリン、「親愛なる日記」でカンヌと、40歳にして3大映画祭を制覇したナンニ・モレッティ監督が製作・脚本・出演も兼ねたコメディ・ドラマ。イタリア・ローマ郊外にあるヨーロッパ最大の撮影スタジオ、チネチッタ撮影所で撮影を敢行した。映画監督ジョヴァンニは新作の撮影中に立て続けに災難に見舞われ、自分が時代の変化についていけていないことに気付き、悩み焦り始める。ベテランの映画監督ジョヴァンニをナンニ・モレッティ監督自身が演じるほか、「母よ、」などモレッティ監督作常連のマルゲリータ・ブイや、フランスの俳優・監督マチュー・アマルリックらが出演。2023年第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  • 文筆業

    奈々村久生

    2020年代に入って2本目となるモレッティの新作は彼自身が映画監督を演じる系譜の一本。ドゥミやフェリーニをはじめ往年の映画界へのオマージュは、時代の変化についていけない高齢者の言い訳のようでもあり、映画言語だけで物事を語ろうとするシネフィルの滑稽さが逆説的に批評性を獲得しているのが皮肉。ただ、プロデューサー役のマチュー・アマルリックと二人、かつて「親愛なる日記」で走らせたベスパから電動キックボードに乗り換え、夜のローマを滑走するカットはいつまでも見ていたい。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    ナルシシズムが強い政治的な男性の映画関係者が主人公の、古い映画をいろいろ引用してるらしき(そんなことを言われたって古い映画ぜんぜん観てないからわからん)映画についての映画が苦手だ。映画という表現そのものを否定するオチにでもしないと、結局は主人公の人生を肯定して終わることになる。なぜそんな特権をもてるのか。巨匠モレッティ70歳でお元気なのは結構だが、たけし(も76歳か)の暴力映画のナルシシズムのほうがいい。死者と敗者の(だよね?)行進も、感動できなかった。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    撮影中の映画が資金難で暗礁に乗り上げた監督をモレッティ自身が演じる。イタリア共産党の話らしいが政治的意図は感じないし、プロデューサーの妻が担当している若手監督の現場に乱入し、撮影を止めてしまう狼藉に?然とする。みずから老害という宣言か、本当に昨今の作品が観るに堪えないと思っているのか。チーヴァー原作の「泳ぐ人」を撮りたいという発言も、すでにバート・ランカスターの名作があるのに、それを超えられるつもりなのか、どういう心理か測りかねる。

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