パリのちいさなオーケストラの映画専門家レビュー一覧
パリのちいさなオーケストラ
パリ郊外で育ったアルジェリア系の少女が指揮者を目指した実話を映画化。パリ近郊の音楽院でヴィオラを学ぶザイアは、最終学年でパリ市内の名門音楽院に編入が認められ、指揮者を目指す。アウェーの雰囲気のなか、世界的指揮者の指導を受けることになり……。監督・脚本は、「奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ」のマリー・カスティーユ・マンシヨン・シャール。出演は、「見えない太陽」のウーヤラ・アマムラ、「きみへの距離、1万キロ」のリナ・エル・アラビ、「真夜中のピアニスト」のニエル・アレストリュプ。
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文筆業
奈々村久生
音楽界の中でも特に指揮者のポジションにおけるジェンダーアンバランス、移民差別や彼らとの共存など、実話ベースとはいえ訴えるに足る要素が詰め込まれた形。ただしテーマが強固である分、それを語るドラマの作劇や映像表現はやや脆弱で、現実の複雑さをカバーしきれていないように思う。ヒロインはいくつかの困難に直面するも、それなりの努力をすれば報われるのが既定路線となっている。ただ、女性が当たり前に指揮棒を振る姿を写し、それが多くの人の目に触れることには意味がある。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
最初の30分、観ているのが本当につらかった。僕は人種差別されたこともなく、男だからという理由で悔しい思いをしたこともないので罪悪感が湧きあがり、主人公を意地悪に嘲笑う白人の金持ちの少年少女たちに激しい共感性(というのもなんだけど)羞恥を感じたからだ。主人公姉妹の人生を祝福したい。もちろん女性には(恋愛以外のことに)執念をもてる人が沢山いる。ただ、世界が変わっても才能もなく運もなく性格も悪い者は結局、差別されちゃうんだよなと映画とは関係ないことも思う。
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映画評論家
真魚八重子
実話に基づいた映画で、パリに限定したタイトルと少し違い、主人公はパリ郊外に住むアルジェリア移民の少女だ。パリの富裕層が集まる音楽院と、郊外の移民が多い貧困地区という対立構造があり、女性が指揮者を志すことへの性差別も描かれる。そのために主人公が郊外で指揮を執るオーケストラを作る物語で、パリの音楽院にも彼女に共鳴する仲間はおり、移民にも演奏能力はあると明らかにする。ただ善悪をはっきりさせすぎていささか鼻白むし、わかりやすさがスケールをすぼめている。
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