サユリ(2024)の映画専門家レビュー一覧

サユリ(2024)

押切蓮介の漫画をホラーの鬼才・白石晃士が映画化。夢のマイホームに引っ越してきた神木家。ところが、少女の霊“サユリ”の呪いにより、家族が1人ずつ謎の死を遂げる。残された中学3年生の則雄と認知症の“ばあちゃん”は“サユリ”に復讐を挑むが……。出演は「ザ・ファブル」の南出凌嘉、「湖の女たち」の根岸季衣。
  • 文筆家

    和泉萌香

    原作からそのまま飛び出してきたような、最強婆ちゃんを演じる根岸季衣の弾けっぷり! 呆気にとられるほど最悪な、しかもそこから逃げられない!という事態に立ち向かうには、兎にも角にも元気を出すことだと文字通りパワー全開、エンジン全開で推し進める痛快さ。一人の少年の通過儀礼的物語でもあり、怨霊化した少女の理由も哀しいのだが、そんな余韻は残させないとばかりにたたみかけるサービス精神。まったく納涼にはならない真夏のエンタテイメント・ホラー。

  • フランス文学者

    谷昌親

    「貞子vs伽椰子」も撮っている白石晃士監督だけに、Jホラーをしっかり踏まえているはずだが、家にまつわる物語でありながら、その映画的な表現は「呪怨」に遠く及ばない。もちろん、この「サユリ」の場合、Jホラーとは異なる試みをしているのだろうし、実際、突如としてアクション映画のごとき展開になるあたりには痛快さも感じられるのだが、それも、凄惨でひたすら内向きの復讐劇となっていき、それでいて都合よく事件性が発覚しないというのでは、作品としての緊迫度が保ちえない。

  • 映画評論家

    吉田広明

    後半になって中心になる人物すら変わってくるあたりが新機軸ということになるだろうが、それまでの前半がホラーとしてはありきたりで若干タルく見える。悪霊vs.祖母=長男チームのバトルと、サユリがいかにして悪霊と化したのかの哀話の交代。前半後半に分かれ、さらに後半も二重化して、構造が若干煩雑。バトルのロックなノリが、サユリ周りの話でスピードダウンしている。さらにサユリの陰惨な過去も挿話的な処理で、深刻な話をネタ使いされているようであまりいい気はしない。

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