寺島しのぶ テラジマシノブ

  • 出身地:京都府京都市
  • 生年月日:1972/12/28

略歴 / Brief history

京都府京都市の生まれ。父は歌舞伎役者の七代目・尾上菊五郎、母は女優・富司純子という歌舞伎の名門・音羽屋の長女として生まれる。5歳下の弟は五代目・尾上菊之助。青山学院大学文学部在学中の1992年に文学座研究所に入所、研修生となる。93年、『恋と仮面とカーニバル』で初舞台を踏み、それを見た劇作家の清水邦夫の推薦を受けて、蜷川幸雄演出『血の婚礼』93で重要な役のトランシーバー少年に抜擢された。95年、蜷川演出『近松心中物語』のお亀役で読売演劇大賞優秀女優賞、松尾芸能賞演劇新人賞を受賞。99年まで再演の度にお亀を演じ続ける。その間の96年に文学座を退団。いくつもの演劇賞を受賞し頭角を現し始めた寺島は、新派特別公演『遊女夕霧』『鹿鳴館』、坂東玉三郎演出『ふるあめりかに袖はぬらさじ』などに出演し、96年の水谷幹夫演出『華岡青洲の妻』では文化庁芸術祭賞新人賞を受賞した。97年、「奇跡の人」で大竹しのぶ演じるサリバン先生を相手にヘレン・ケラーを生のほとばしりを鮮やかに表現する。同年はほかに、久世光彦演出『新派特別公演』、釜紹人演出『常陸坊海尊』などにも出演。読売演劇大賞優秀女優賞を受賞している。さらに2002年には、蜷川幸雄演出『欲望という名の電車』でのステラの演技で、読売演劇大賞優秀女優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した。こうして舞台で着実に実績を積み重ねる一方で、映像ジャンルにも進出。テレビドラマは文学座入団前の89年に、母・富司純子がヒロインを演じたNHK『詩城の旅人』に本名の“寺島忍”名義でゲスト出演したのが最初だが、本格的な初出演となったのは93年のNHK大河ドラマ『琉球の風』。尾上菊五郎、富司純子との家族共演となり、琉球王国の姫を演じた。94年のテレビ東京『あにいもうと』では両切り煙草を吸っている女給を演じ、演技の幅広さを見せている。以降もNHK『八代将軍吉宗』95、『北条時宗』01、テレビ朝日『愛しすぎなくてよかった』98、TBS『ラブとエロス』98などのテレビドラマに出演。また、映画初出演となった水野晴郎監督「シベリア超特急2」00を経て、03年、車谷長吉の直木賞小説が原作の荒戸源次郎監督「赤目四十八瀧心中未遂」に主演する。背中一面に迦陵頻伽の入れ墨を入れた姿をさらすシーンやセックスシーンなどがあり、母が止めるのを振り切って自ら出演を決め、下層の暮らしを送る主人公をここではない世界へと誘う濃密な魅力を持った女・綾を演じた。この年はさらに、赤坂真理原作の廣木隆一監督「ヴァイブレータ」もあり、こちらは偶然出会った長距離運転手のトラックに乗って短い旅をする女・早川玲役。フリーライターの仕事をするうちに他人の思考や言葉に精神を支配されていく玲が、男と体を交わすことで次第に解放され、本能がほどけていくさまを生々しく演じた。この2作の演技により、キネマ旬報賞、毎日映画コンクール、日本アカデミー賞、ブルーリボン賞、報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞、ヨコハマ映画祭と国内の主要映画賞のほとんどで主演女優賞を獲得。キネマ旬報賞は新人女優賞とのダブル受賞となり、ほかに東京国際映画祭最優秀主演女優賞、エランドール賞新人賞も受賞している。以後も源高志監督「tokyo tower」05、廣木監督「やわらかい生活」06、鶴橋康夫監督「愛の流刑地」07など、愛に生きる女性の姿を心と体の両面から演じていくことへ圧倒的な力を見せつける。08年の矢口史靖監督「ハッピーフライト」ではプロフェッショナルなキャビンアテンダント役、佐藤裕市監督「守護天使」09ではパワフルな鬼嫁役などライトな作品にも出演している。さらには、若松孝二監督「キャタピラー」10に、戦争で手足を失った夫を献身的に介護する妻・シゲ子役で主演。最初は夫の言いなりになっていたシゲ子だが次第に状況が逆転していき、変わり果てた夫に嫌悪を抱きながら、軍神の妻としての誇りを支えに耐える姿、そして、だんだんと夫へ嗜虐的な感情を持っていく演技のプロセスが鮮烈だった。この作品でベルリン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。一方、舞台でも活躍は続き、04年の『新・近松心中物語/それは恋』で尊敬していた女優・太地喜和子の当たり役だった遊女・梅川を演じる。文学座研究所の同期だった内野聖陽と共演したジョン・ケアード演出『私生活』08では、文化庁芸術祭賞優秀賞を受賞。その他の舞台出演作に、永井愛演出『書く女』06、行定勲演出『フールフォアラブ』07、グレゴリー・ドーラン演出『ヴェニスの商人』07、蜷川演出『血は立ったまま眠っている』10、松本祐子演出『やけたトタン屋根の上の猫』10、鈴木裕美演出『TOP GIRLS』11などがある。テレビドラマはほかに、男勝りな女剣客を演じたフジテレビの人気時代劇シリーズ『剣客商売』03~05や、NHK大河ドラマ『武蔵/MUSASHI』03、連続テレビ小説『純情きらり』06、日本テレビ『おとなの夏休み』05、テレビ朝日『四つの嘘』08など。10年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』では龍馬の姉を生活力豊かに演じ、同局『TAROの塔』11では、主人公・岡本太郎の母・かの子というエネルギッシュな女性を演じている。私生活では07年、日本在住のフランス人アート・ディレクター、ローラン・グナシアと結婚。

寺島しのぶの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • わたしのかあさん 天使の詩

    制作年: 2024
    児童福祉文化賞を受賞した菊地澄子による児童文学『わたしの母さん』を寺島しのぶ主演で映画化。知的障がい者の両親のもとに生まれた高子。一時は周囲と違う両親を恥じたが、時は流れ、高子は障がい者特別支援施設の園長となり、母・清子と過ごした日々を回想する。共演は「だれかの木琴」の常盤貴子、「春画先生」の安達祐実。監督は「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」の山田火砂子。
  • 世界で戦うフィルムたち

      制作年: 2022
      新人監督・亀山睦木が、自身の作品を国際映画祭へ持ち込むまでの軌跡を記録したドキュメンタリー。SF『12ヶ月のカイ』を110か所以上もの海外の映画祭へ応募し、アメリカ、ヨーロッパへ足を運ぶ亀山。映画関係者へのインタビューを交え、日本映画の現状を見つめる。出演は「あちらにいる鬼」の寺島しのぶ、「アースクエイクバード」の祐真キキ、「天間荘の三姉妹」の北村龍平。
    • あちらにいる鬼

      制作年: 2022
      後に出家し、“寂聴”を名乗った作家・瀬戸内晴美と不倫の恋に落ちた作家・井上光晴。そして、2人の関係を承知しながらも添い遂げた井上の妻。その渦中で育った井上の長女で直木賞作家の井上荒野が3人をモデルに執筆した同名小説を廣木隆一が映画化。出演は「空白」の寺島しのぶ、「ミッドウェイ 日本の運命を変えた3日間」の豊川悦司、「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」の広末涼子。
    • 天間荘の三姉妹

      制作年: 2021
      交通事故で臨死状態になった天涯孤独な少女が、天か地か行く先を決断できるまで天空の町にある旅館「天間荘」で過ごすことになり、腹違いの二人の姉と交流を深めるなかで大切なものに気づいていく物語。のん、門脇麦、大島優子が三姉妹を演じ「この世界の片隅に」の製作スタッフが贈る、命の尊さ、家族の愛情や、人との絆の意味を問いかける感動作。高橋ツトムの代表的漫画『スカイハイ』のスピンオフ作品『天間荘の三姉妹-スカイハイ-』を原作に、現在ハリウッドを中心に活躍する「ドアマン」の北村龍平監督が映画化した。
    • 空白

      制作年: 2021
      古田新太、松坂桃李初共演、吉田恵輔監督・オリジナル脚本で贈る「空白の時代」とそこに生きる人間の業を炙り出すヒューマンサスペンス。中学生の少女の万引き未遂事件と逃走中の不幸な死。追いかけた店長は少女の父親の逆襲にあい、人生を脅かされていく。人と人のつながりや家族の絆の希薄さ、そしてメディアの狂乱も手伝い、思わぬ方向に感情が増幅してしまう危険をはらんだ現代社会。やがて登場人物たちは、愛と憎しみの果てに「全員被害者・全員加害者」の様相を呈していく。偽り、圧力、良心の呵責……空白の時間に起きた事件が生み出す人々の心の空白。その空白は何で埋められるのか? 一見沈鬱に見える題材をシニカルかつブラックユーモアを交えた視点で描くのは、「ヒメアノ~ル」「愛しのアイリーン」の吉田恵輔監督。観る者の心臓をあわだてる悪夢のような父親・添田充に、劇団☆新感線の看板役者の古田新太が扮し、7年ぶりの主演作を完成させた。土下座しても泣いても決して許されず、人生を握りつぶされるスーパーの店長・青柳直人に、「新聞記者」でアカデミー賞最優秀主演男優賞に輝いた松坂桃李。企画・プロデュースは、「あゝ、荒野」「新聞記者」「宮本から君へ」など話題作を世に送り出してきたスターサンズの河村光庸。
    • 劇場版 アーヤと魔女

      制作年: 2020
      『ハウルの動く城』のダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童小説を原作に、宮崎駿が企画を担当したスタジオジブリ初のフル3DCGアニメ。NHKで放送されたバージョンに新規カットを追加して劇場公開。魔女の家に引き取られた孤児の少女アーヤの奮闘を描く。声の出演は「水上のフライト」の平澤宏々路、「ヤクザと家族 The Family」の寺島しのぶ、「ミッドウェイ」の豊川悦司、「おらおらでひとりいぐも」の濱田岳。監督は「コクリコ坂から」の宮崎吾朗。
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