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略歴 / Brief history
【突撃取材で米国を斬るドキュメンタリー映画界の反逆児】アメリカ、ミシガン州フリントの生まれ。ミシガン大学を中退後、自ら創刊した地方紙でジャーナリストとしての活動をスタートする。1989年、GMの生産拠点である故郷の工場閉鎖に伴う大量解雇を取材した「ロジャー&ミー」で監督デビュー。GM経営者への突撃取材が批評家の絶賛を得る。その後はテレビ界へも活躍の場を広げ、突撃取材などを用いたユニークなドキュメント番組を製作する。95年には初の劇映画「ジョン・キャンディの大進撃」を監督。アメリカが隣国カナダを仮想敵国に仕立てるブラック・コメディだった。2000年のアメリカ大統領選では緑の党を支援、民主党の票を喰ってしまい、ブッシュ勝利に貢献してしまう皮肉な結果を生んだ。実際に起きた高校生銃乱射事件を軸に、アメリカ銃社会を鋭くえぐった「ボウリング・フォー・コロンバイン」(02)はアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。授賞式での反ブッシュ発言は賛否両論を巻き起こした。04年には、ブッシュ大統領を激しく糾弾した「華氏911」がカンヌ映画祭パルムドールを受賞し、ドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録。一躍ヒットメーカーとなったムーアは、その後も一貫してアメリカ社会が抱えるあらゆる矛盾や不正に対してメスを入れ続け、09年にその集大成となる新作「キャピタリズム/マネーは踊る」を発表する。その公開時には「本作をもってドキメンタリー製作に一区切りをつける」とも発言している。【“ヒットするドキュメンタリー”の確立】1920年代、ロバート・フラハティによって確立されたドキュメンタリー映画は、以後、国策プロパガンダや思想運動、社会問題や特定個人の追認、音楽・スポーツイベントの記録に自然観察など多様に発展してきた。しかしそれらの多くは商業性とかけ離れ、“意義はあっても退屈で地味な分野”という印象から逃れ難い。そんな中、ムーアは被写体に積極的に関わるシネマヴェリテやダイレクトシネマの手法を拡張し、エンタテインメントとしてのドキュメンタリーを確立。突撃取材や派手なパフォーマンス、時に意図的な“やらせ”を含むテレビショー的演出を持ち込み、“現場”を写実的に“記録”していた従来のドキュメンタリーの常識を覆した。ムーアの作品では常に自身がガイド役をつとめ、主観的に進行・主張することで観客の共感(あるいは反感)を得る。重いテーマもシニカルな笑いの素材となって小難しい印象は払拭され、一般に広く受け入れられつつ、ドキュメンタリーとしては異例の世界的ヒットを生んだ。時にそのパフォーマンスは批判され、数々の妨害にもみまわれるが、賛否いずれにせよ、まずは人々の興味を喚起することに成功している。こうした活動で主義主張型のドキュメンタリーを商業映画に成長させた功績は大きい。
マイケル・ムーアの関連作品 / Related Work
作品情報を見る
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すべての政府は嘘をつく
制作年: 2016オリバー・ストーンが製作総指揮を務め、大手メディアに代わって、独自の調査報道で真実を伝える独立系ジャーナリストたちの闘いを追ったドキュメンタリー。映画監督マイケル・ムーア、哲学者のノーム・チョムスキーらが、真実を隠蔽する権力の欺瞞を暴く。スノーデンの取材で知られるグレン・グリーンウォルド、ウォータゲート事件をスクープしたカール・バーンスタインも登場。劇場公開に先駆け、2017年2月4日、15日、24日にプレミア上映。 -
マイケル・ムーアの世界侵略のススメ
制作年: 2015「ボーリング・フォー・コロンバイン」のマイケル・ムーア監督による世界侵略をテーマとしたドキュメンタリー。アメリカ国防総省の相談を受けたムーアは、侵略者として自ら空母でヨーロッパに向かい、侵略する国に存在する“あるモノ”を略奪する。70点 -
キャピタリズム マネーは踊る
制作年: 20092008年に始まった世界規模の不況により自宅や職を失う人が続出する一方、その原因を作った投資銀行や保険会社は税金で救われている。巨大企業による利益の追求が世界経済に与える影響を通して、アメリカの資本主義の本質を描くドキュメンタリー。監督は、「ボウリング・フォー・コロンバイン」のマイケル・ムーア。88点