室井滋 ムロイシゲル

  • 出身地:富山県滑川市
  • 生年月日:1960/10/22

略歴 / Brief history

富山県滑川市の生まれ。県立魚津高校から早稲田大学社会科学部に進学し、大学在学中より自主映画製作に参加。山川直人監督「ビハインド」78、「パン屋襲撃」82、石井聰亙監督「シャッフル」81、長崎俊一監督「闇打つ心臓」82など、当時の自主映画界をリードしていた精鋭監督たちの作品に次々と出演し、“自主映画の女王”と呼ばれた。1981年、森田芳光監督の劇場デビュー作「の・ようなもの」などを経て、大森一樹監督「風の歌を聴け」で本格的に劇場映画デビュー。主人公の“僕”が寝た3人の女の子のひとりで、のちに自殺する仏文科の学生を、不思議な浮遊感を漂わせて演じた。以後は女優業で多忙となり、大学を7年で中退するも、大森監督の「すかんぴんウォーク」84、「恋する女たち」86、「トットチャンネル」「『さよなら』の女たち」87、「花の降る午後」89、山川監督の「ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け」86、「SO WHAT」88などで盟友の信頼に応え続ける。87年、大森作品で共演した斉藤由貴がホストをつとめるフジテレビのトーク番組『斉藤さんちのお客さま』でアシスタント役のメイドに扮し、軽妙な掛け合いでお茶の間にアピール。翌88年には、同局の深夜ドラマ『やっぱり猫が好き』で、もたいまさこ、小林聡美と“恩田三姉妹”を演じる。このアドリブ満載のスリリングなシチュエーションコメディは深夜枠ながらも好評を博し、長期シリーズ化。91年9月の放送終了後も、たびたびスペシャル版として復活する人気作となる。91年、作詞家・秋元康の初監督作「グッバイ・ママ」では不倫中の夫を待つ妻を、翌92年の「マンハッタン・キス」では姉と同じ男を奪い合う武闘派の妹を演じて、芸域の幅をさらに広げる。さらに94年、渡邊孝好監督「居酒屋ゆうれい」に出演。再婚しないという約束を破り、若い後妻と一緒になった夫(萩原健一)のもとに化けて出る亡き先妻を、生への痛切な未練をにじませながら愛らしく演じ、キネマ旬報賞助演女優賞をはじめ、各映画賞を総なめにする。以後も、栗山富夫監督「釣りバカ日誌8」96のゲスト出演などを経て、98年の三原光尋監督「ヒロイン!・なにわボンバーズ」に主演。大阪色濃厚な面々に囲まれた“アウェー”な状況の中、ママさんバレーでハッスルする浪花のおばちゃんを体当たりで演じ、この経験は、同じく情にもろい大阪女を好演した三池崇史監督「金融破滅ニッポン・桃源郷の人々」02でも活きた。99年の井筒和幸監督「のど自慢」では、プライドをかけて“のど自慢”に出場する売れない演歌歌手・赤城麗子を熱演し、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。同年、その後日談を描くスピンオフ「ビッグ・ショー!・ハワイに唄えば」にも主演した。2002年、桐野夏生のベストセラーを映画化した平山秀幸監督「OUT」では、4人の女たちによる完全犯罪にヒビを入れる大雑把なトラブルメーカーを、観る側をもやきもきさせつつ茶目っ気豊かに快演。さらに、前述の8ミリ作品のその後を、実験的手法で撮った長崎監督のセルフリメイク版「闇打つ心臓」06では、共演の内藤剛志とともに、過ぎ去った年月の重みをフィルムに焼きつけた。本木克英監督「ゲゲゲの鬼太郎」07では砂かけ婆を原作のイメージ通りに好演し、亀井亨監督「ねこタクシー」10、沢木耕太郎のルポルタージュ集の映画化「人の砂漠」10でも老け役を演じた。また、根岸吉太郎監督「ヴィヨンの妻・桜桃とタンポポ」09、荒戸源次郎監督「人間失格」10と太宰治原作ものに相次ぎ出演し、片や面倒見のいい小料理屋の女将、片や若い男に飢えた薬屋の女主人を妙演。独特の世界観に見事に溶け込んだ。テレビドラマは、日本テレビ『心療内科医・涼子』97、『凍りつく夏』98などに主演したほか、数多くの連ドラに助演。01年、テレビ朝日の新春スペシャルドラマ『菊次郎とさき』では、原作者・ビートたけしの実母・さき役を力演し、のちに連ドラ化もされ、第3シリーズまで続く当たり役となる。その間、実際の事件を題材にした長崎俊一演出のフジテレビ『最期のドライブ』92では、共犯の男性を巧みに操りながら淡々と罪を重ねる犯人を、渡邊孝好演出のNHK『緋色の記憶・美しき愛の秘密』03では夫の不倫で精神に異常をきたす妻を怪演するなど、昔なじみの監督作でも気を吐く。ドラマ出演作はほかに、フジテレビ『アフリカの夜』99、『ビギナー』03、NHK『マッチポイント!』00、『純情きらり』06、『ウェルかめ』09、テレビ朝日『恋は戦い!』03、『黒革の手帖』04、『夜光の階段』『マイガール』09など多数。『むかつくぜ!』『すっぴん魂』などの著作で、エッセイストとしても活躍している。映画監督の長谷川和彦とは長く同居生活にあり、事実婚の状態であることをたびたび報じられている。

室井滋の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • ぶぶ漬けどうどす

    制作年: 2025
    東京から嫁いできた妻が「本音と建前」を使い分けるといわれる京都の県民性に翻弄されるシニカル・コメディ。京都の老舗扇子店の長男と結婚したフリーライターの澁澤まどかは、老舗の暮らしぶりをコミックエッセイにしようと、義実家や街の女将さんたちに取材しようとするが……。「his」の脚本家アサダアツシが企画、構想に7年を費やした。監督は「鍵と黒鍵の間に」の冨永昌敬。京都を愛するあまり暴走する妻まどかを深川麻衣、まどかの義母の澁澤環を室井滋が演じる。
  • ハッピー☆エンド(2025)

      制作年: 2025
      「いただきます」「夢みる小学校」で教育、農業、食育を描いたオオタヴィン監督が、医療をテーマに生きる喜びを問いかけるドキュメンタリー。自宅で自分らしい生活を送れる治療法「在宅緩和ケア」を選択した5つの家族と、それに寄り添う萬田緑平医師の姿を追う。ナレーションは「Fukushima 50」の佐藤浩市と「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」の室井滋。
    • ファミリア

      制作年: 2022
      山里に暮らす陶器職人の父と海外で活躍する息子、そして隣町の団地に住む在日ブラジル人青年の3人を中心に、国籍や育った環境、言葉の違い、血のつながりを超えて、強い絆で“家族”を作ろうとする人々を描いた人間ドラマ。現在、280万人の外国人が暮らす日本で、実際に起きた事件などをヒントにした、いながききよたかのオリジナル脚本を映画化した。主人公・神谷誠治に役所広司、息子の神谷学を吉沢亮、在日ブラジル人青年マルコスと彼の恋人エリカを、共にオーディションで選ばれた在日ブラジル人のサガエルカスとワケドファジレ。さらにマルコスらを執拗に追いかける半グレのリーダー・榎本海斗をMIYAVI、誠治の友人で刑事・駒田隆を佐藤浩市、地元のヤクザ・青木を松重豊が演じるほか、中原丈雄、室井滋らが共演。監督は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」の成島出。
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    • 七人の秘書 THE MOVIE

      制作年: 2022
      目立たぬことを極意とする秘書たちが、金や権力に溺れた権力者たちを一掃する姿を描くTVドラマ『七人の秘書』の劇場版。信州でラーメン屋を営む緒方航一の依頼を受け、雪深き地に向かった七人。だがそこには国家を巻き込むほどの巨大な陰謀の影が渦巻いていた。木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介といったTV版レギュラー陣のほか、玉木宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶がゲスト出演。監督はTV版の演出を手がけた田村直己。
    • 草の響き

      制作年: 2021
      「海炭市叙景」「きみの鳥はうたえる」から続き、函館の映画館シネマアイリスが製作を手がける佐藤泰志原作映画化第5弾。心に失調をきたし妻と函館に戻った和雄は、医師の勧めで毎日街を走ることに。やがて路上で出会った若者たちと交流を持ち始めるが……。監督は「空の瞳とカタツムリ」の斎藤久志。走ることで徐々に再生する和雄を「寝ても覚めても」の東出昌大が、夫を理解しようと努める妻・純子を「みをつくし料理帖」の奈緒が演じる。函館シネマアイリス25 周年記念作品。
    • 地獄の花園

      制作年: 2021
      TVドラマ『架空OL日記』で第36回向田邦子賞を受賞、脚本家としても活躍するお笑い芸人バカリズムが脚本を手がけるコメディ。ごく普通のOL生活を送る田中直子。しかし彼女の職場の裏では、特攻服を着たOLたちが拳と拳で熾烈な派閥争いに明け暮れていた……。監督は、Perfumeやサカナクションなど数々のアーティストのMV、CM、TVドラマを手がけてきた関和亮。「君は月夜に光り輝く」の永野芽郁らが、OLたちの仁義なき戦いを繰り広げる。
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