江波杏子 エナミキョウコ

  • 出身地:東京市渋谷区千駄ケ谷の生まれ
  • 生年月日:1942/10/15
  • 没年月日:2018/10/27

略歴 / Brief history

東京市渋谷区千駄ヶ谷(現・東京都渋谷区)の生まれ。本名・野平香純(かすみ)。父・明義は飲食業、母・和子は戦前の東宝女優・江波和子。弟がふたりいる。宝仙学園中学から同高校に進み、在学中の1959 年、大映の第13 期ニューフェイスとして入社。高校を2年で中退した60 年に「明日から大人だ」でデビューする。この年、10 数本の映画に出演したが、その中の市川崑監督「おとうと」での看護婦役が印象に残る。当時から鋭角的なマスクは個性的すぎて、デビュー後4~5年間の役柄は若尾文子、野添ひとみなどが演じるヒロインの純情ぶりを引き立てる悪女や情婦役が多い。ようやく彼女の個性が注目を集めるようになったのは65 年度の製作者協会新人賞(現・エランドール賞)を受賞し、怪我をした若尾文子の代役として「女の賭場」66 の主役を射止めてからだ。女賭博師・沢井アキを和服姿で演じたクールなエロティシズムは日本の女優にはない西欧的な美貌と、巧妙なサイの扱いが話題になった。翌67 年の「女賭博師」に続いて「女賭場荒し」「三匹の女賭博師67、「関東女賭博師」68 が連作され、いずれも大ヒットを記録。「女賭博師乗り込む」からは、大滝銀子こと“ 昇り竜のお銀” が定着する。このシリーズは「女賭博師乗り込む」から「新女賭博師・壷ぐれ肌」71 まで12 本、「女の賭場」からの前哨的な作品5本を加えると17 本に及ぶ大シリーズとなった。71 年、大映の倒産とともにフリーになり、東宝「二人だけの朝」「出所祝い」71、東映「昭和おんな博徒」「木枯し紋次郎」72 に出演、いずれも“ 女賭博師” のイメージを引き継いだもので大した話題にはならなかったが、斎藤耕一監督のATG 作品「津軽じょんがら節」73 で女優としての新生面が開ける。雪景色と荒波の故郷津軽に恋人を連れて帰ってきた酒場女・イサ子。東京で身についた都会性のために漁村では受け入れられないヒロインの哀しみは、彼女の特色である日本人羽離れした美貌と肢体をより際立たせた。これでキネマ旬報賞女優賞を獲得し、大衆映画のヒロインから演技派への転身に成功する。その後、再び斎藤監督の松竹映画「再会」75 で野口五郎の姉をしっとりと演じ、鈴木清順監督の「悲愁物語」77 ではスターに憧れる平凡な主婦の屈折した感情を好演している。以降も、深作欣二監督「赤穂城断絶」78、降旗康男監督「日本の黒幕(フィクサー)」79、横山博人監督「純」80、村野鐵太郎監督「遠野物語」82、保坂延彦監督「愛しき日々よ」85、伊藤俊也監督「花園の迷宮」88、森田芳光監督「悲しい色やねん」88、君塚匠監督「喪の仕事」91、勅使河原宏監督「豪姫」92、長崎俊一監督「ナースコール」93、梶間俊一監督「集団左遷」94、手塚眞監督「白痴」99 などから、近年の阪本順治監督「KT」02、同「行きずりの街」10、及川中監督「吉祥天女」07、佐藤東弥監督「ごくせん THEMOVIE」09、富永まい監督「食堂かたつむり」10、和泉聖治監督「相棒・劇場版II /警視庁占拠!特命係の一番長い夜」10 に至るまで、多数に助演している。テレビドラマの出演作には、TBS『ザ・ガードマン』65、『土曜日の虎』66、『Gメン'75』78(準レギュラーで津村冴子警部補)、『眠れない夜をかぞえて』92、『あなたの人生お運びします!』03、『波の塔』06、『佐々木夫妻の仁義なき戦い』08、『冬のサクラ』11、NET(現・テレビ朝日)『非情のライセンス』73、『破れ傘刀舟・悪人狩り』74、日本テレビ『太陽にほえろ!』73、『桃太郎侍』78、『野望の国』90、『けものみち』91、『ごくせん』08、NHK『元禄太平記』75、『春の波涛』85、『ちりとてちん』07、『離婚同居』10、フジテレビ『新・座頭市』77、『ミセスシンデレラ』97、『大奥・華の乱』05、『今週、妻が浮気します』07、『不毛地帯』09、テレビ東京『それからの武蔵』81、テレビ朝日『チェンジ!』98 などがある。2018年10月27日東京都内の病院にて逝去。享年76歳。

江波杏子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 娼年

    制作年: 2017
    性の極限を描いた石田衣良の直木賞候補作を、2016年の舞台に続き松坂桃李主演、「何者」の三浦大輔監督で映画化。ボーイズクラブのオーナー静香に娼夫になるよう誘われるリョウ。女性や恋に興味がなかった彼が、次第に女性の欲望の奥深さに気付いていく。松坂桃李が成長していくリョウを体当たりで演じるほか、元宝塚歌劇団花組トップスターの真飛聖、「アンチポルノ」の冨手麻妙、「関ケ原」の西岡徳馬らが出演。また、舞台版に続き江波杏子が老女役を演じる。
    60
  • ぶどうのなみだ

    制作年: 2014
    心優しい夫婦が営む湖畔のパンカフェを映しスマッシュヒットを記録した「しあわせのパン」の三島有紀子監督と大泉洋が、再びタッグを組んだハートウォーミング・ドラマ。北海道の中西部にある空知を舞台に、父からぶどうの樹と小麦畑を受け継ぎワイナリーを営む兄弟と不思議な魅力のある女性とが出会い、悔しさや悲しさを噛みしめながら距離を縮めていく。大泉洋は夢破れて地元に戻りワイン作りに励むがうまくいかず苦悩する兄を演じる。そんな兄を複雑な思いで見つめる弟に「ヒミズ」の染谷将太が、彼らのもとにやってくるのびのびとした女性に歌手の安藤裕子が扮している。おいしそうな料理や北海道ならではの風景が作品を彩る。2014年10月4日より、北海道先行公開。
    60
  • 無花果の森

    制作年: 2014
    直木賞作家・小池真理子の同名小説を原作に「武士道シックスティーン」の古厩智之監督が映画化。行き場を失い、身を潜めながら生きる男女の恋愛模様を描く。出演は、K-POPグループ“超新星”のユナク、「この空の花 長岡花火物語」の原田夏希、「武士の家計簿」の小木茂光、「人類資金」の三浦誠己。脚本を「ストロベリーナイト」の林誠人が担当する。
  • 桜、ふたたびの加奈子

    制作年: 2013
    数多くのサスペンス小説を生み出してきた作家・新津きよみの『ふたたびの加奈子』(ハルキ・ホラー文庫、ハルキ文庫・刊)を映画化。幼くして事故で亡くなった娘が生まれ変わってくると訴える妻と、そんな妻を支えようとしながらも見守ることしかできない夫の再生への道のりを描く。監督・脚本は「飯と乙女」の栗村実。亡き娘を思うあまり予期せぬ行動に出る妻を「鍵泥棒のメソッド」「おくりびと」の広末涼子が、現実を受け止めない妻を支えたいと願う夫を「十三人の刺客」「笑の大学」の稲垣吾郎が演じる。ほか、「Little DJ~小さな恋の物語」の福田麻由子、テレビドラマ『バッテリー』の高田翔、「行きずりの街」の江波杏子らが出演。
  • 地獄でなぜ悪い

    制作年: 2012
    「愛のむきだし」、「ヒミズ」などで注目を集める園子温監督が、ヤクザの組長が映画製作を始めたことから巻き起こる騒動を描いたアクション・エンターテインメント。出演は園作品初参加となる「そして父になる」の國村隼、「ヒミズ」の二階堂ふみ、「映画 鈴木先生」の長谷川博己、「俺はまだ本気出してないだけ」の堤真一。
    70
  • 映画 桜蘭高校ホスト部

    制作年: 2012
    葉鳥ビスコの同名コミック原作による実写版TVドラマの劇場版。セレブな家庭の子女ばかりが通う名門校を舞台に“ホスト部”に入部した女子高校生の恋と青春を描く。出演は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の川口春奈、「忍たま乱太郎」の山本裕典、「ギャルバサラ 戦国時代は圏外です」の篠田麻里子。