三隅研次 ミスミケンジ

  • 出身地:京都市
  • 生年月日:1921/03/02
  • 没年月日:1975/09/24

略歴 / Brief history

【格調ある演出で大映時代劇の頂点に立つ名匠】京都市の生まれ。1941年、立命館大学高等商学部を卒業し、知人の紹介で日活京都撮影所に助監督として入社するが、翌42年に応召。敗戦まで満州で兵役につき、シベリア抑留を経て47年に帰国すると、大映京都撮影所の助監督となり、伊藤大輔、松田定次、衣笠貞之助らに師事した。54年、監督に昇進し、大河内傳次郎主演の「丹下左膳・こけ猿の壺」でデビュー。以後、大映で時代劇を中心にプログラムピクチャーを撮り続け、61年には日本初の70ミリ映画「釈迦」を発表する。釈迦の伝記をアクションを交えて描いた大作で、この成功により三隅は一躍注目されることとなった。しかし、三隅本来の持ち味は、むしろもっとこじんまりとした作品にこそよく現れていて、翌62年に勝新太郎主演の「座頭市物語」が、本当の意味での代表作と言えるだろう。座頭(頭を剃った盲人を指す言葉)の男・市が名剣士だという剣戟を、三隅は人物の性格と剣のスリルをうまく調和させ、格調ある演出でひとつのスタイルを作り出した。この作品の成功により勝演じる座頭市は時代劇の新しいヒーローとなり、シリーズ化もされた。三隅は全26作の「座頭市」シリーズのうち6本で演出を担当。さらに勝とは「酔いどれ博士」(66)、「とむらい師たち」(68)、「狐のくれた赤ん坊」(71)などでも名コンビぶりを発揮した。また、勝とともに大映黄金期を支えたスター・市川雷蔵とは「大菩薩峠」2部作(60)、「斬る」(62)、「眠狂四郎」シリーズ3作、「剣」(64)など、大映時代劇の頂点に立つ傑作を数多く手がけている。【時代劇衰退で活躍の場をテレビに】その一方、山本周五郎の小説をもとにした「なみだ川」(67)のように、江戸の片隅に暮らす姉妹の恋を優しく情緒を込めて描写した佳作もあり、チャンバラ以外でもその巧みな演出手腕は遺憾なく発揮された。大映倒産後は、勝プロで若山富三郎主演の「子連れ狼」(72)をヒットさせ、これもシリーズ化されて全6作のうち4作を監督。海外にも輸出された同シリーズは、鮮烈な殺陣の描写がクエンティン・タランティーノやサム・ライミにも大きな影響を与えたと言われる。その後はテレビを主な活躍の場とし、『木枯し紋次郎』『座頭市物語』『狼・無頼控』『必殺仕掛人』『助け人走る』など、やはり時代劇を中心にテレビの世界でも確固たる地位を築いた。劇場用映画は74年に松竹で撮った大作時代劇「狼よ落日を斬れ」が遺作となり、翌75年9月、時代劇映画の衰退を象徴するかのように、肝臓ガンにより54歳で世を去った。

三隅研次の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 天皇の世紀

    制作年: 1971
    幕末から明治維新の激動の時代を描いた大佛次郎の歴史小説を、1971年に朝日放送がドラマ化した全13話の作品を劇場公開。「七人の侍」の志村喬、「トラ・トラ・トラ!」の田村高廣など豪華キャストに加え、山本薩夫、今井正、三隅研次、篠田正浩などの巨匠たちが監督した大作。なお、作者他界により、原作は未完に終わった。
  • 狼よ落日を斬れ 風雲篇・激情篇・怒濤篇

    制作年: 1974
    激動の幕末維新を背景に、血みどろで生きぬいた剣客、英雄たちの鮮烈な、そして魅力的な生きざま、死にざまを描いた長編時代劇。原作は池波正太郎の『その男』。脚本は国弘威雄、監督は「子連れ狼 冥府魔道」の三隅研次、撮影は「にっぽん美女物語」の小杉正雄がそれぞれ担当。
  • 子連れ狼 冥府魔道

    制作年: 1973
    “子連れ狼”シリーズ五作目。柳生一族絶滅のために怨念の旅をつづける拝一刀・大五郎親子の、柳生との凄絶な闘いと、非情な親子の愛を描く。小池一雄・作、小島剛夕・画の劇画『子連れ狼』の映画化。脚本は「高校生無頼控 突きのムラマサ」の小池一雄、と中村努、監督は「桜の代紋」の三隅研次、撮影も同作の森田富士郎がそれぞれ担当。
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  • 桜の代紋

    制作年: 1973
    暴力団も恐れるやくざ刑事が、警察の非人間性を内部から告発するとともに、暴力団組織を徹底的に壊滅していく姿を描く。脚本は「無宿人御子神の丈吉 川風に過去は流れた」の石松愛弘、監督は「御用牙」の三隅研次、撮影は「新座頭市物語 折れた杖」の森田富士郎がそれぞれ担当。
  • 御用牙

    制作年: 1972
    “かみそり半蔵”と異名を取る北町奉行所同心・板見半蔵の、悪には悪をと、体制側にありながら権力に対して牙をむくそのラジカルな行動を描く。週刊“ヤング・コミック”連載の小池一雄・原作、神田たけ志・画の同名劇画の映画化。脚本は原作と同じく「子連れ狼 死に風に向う乳母車」の小池一雄、監督は同作の三隅研次、撮影も同作の牧浦地志がそれぞれ担当。
    90
  • 子連れ狼 死に風に向う乳母車

    制作年: 1972
    “子連れ狼”シリーズ三作目。子連れ刺客、拝一刀と大五郎親子が柳生を討つべく、冥府魔道に生きる様を描く。原作小池一雄、劇画小島剛夕で『漫画アクション』連載中。脚本は「子連れ狼 三途の川の乳母車」の小池一雄、監督も同作の三隅研次、撮影も同作の牧浦地志がそれぞれ担当。
    80